建設産業女性活躍セミナー in 高松

建設産業女性活躍セミナー in 高松建設産業女性活躍セミナー in 高松

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開催日時
平成29年11月7日(火)
14:00〜14:30 基調講演①
14:30〜14:45 基調講演②
14:45〜16:00 パネルディスカッション
16:00〜17:00 名刺交換・交流会
開催場所
TCBホール
基調講演①
「建設業を女性の一生の仕事に〜男女共創の幕開き」
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役 籠田淳子氏
基調講演②
「最近の建設産業政策について」
国土交通省 建設産業局 建設市場整備課長
出口 陽一氏

パネルディスカッション

テーマ
「建設産業において、さらなる女性の入職及び定着を促進するためには」
概 要
○コーディネーター

籠田 淳子氏
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役

○パネリスト

角崎 由貴子氏
大成建設株式会社 四国支店
(一社)土木技術者女性の会
木村 みゆき氏
株式会社村上組 総務部主任
(一社)香川県建設業協会
日下 花菜氏
株式会社合田工務店
(一社)香川県建設業協会
出水 なつよ氏
大協建工株式会社
(一社)全国建設室内工事業協会
畠中 千野氏
大成建設株式会社
原子力本部 原子力土木技術部課長
(一社)日本建設業連合会
出口 陽一氏
国土交通省 土地・建設産業局
建設市場整備課長
橋本 貴央氏
国土交通省 四国地方整備局 建政部
計画・建設産業課長

 

パネルディスカッション

建設産業において、さらなる
女性の入職及び定着を促進するためには

 

籠田:
本日は、さまざまな現場で活躍されている女性に集まっていただきました。皆さん、とても緊張していらっしゃいますので、温かく見守っていただけますよう、よろしくお願いいたします。それではさっそく、会社のお仕事について、また、女性が今どのような状況にあるのかについて、ざっくばらんにお話しいただきたいと思います。

籠田 淳子氏 (有)ゼムケンサービス 代表取締役

籠田 淳子氏
(有)ゼムケンサービス 代表取締役

◆女性が活躍するうえで課題として感じていること〜自己紹介を兼ねて

 

角崎:
私は高知県の大学を卒業して、平成20年に大成建設(株)に入社しました。これまでの工事歴としては、アースフィルダムの建設、公園の造成、石油プラントの工場内での工場土木など、さまざまな経験をしております。現在は高松市でシールド工事に従事しており、シールド工事は初めてということもあり、日々勉強しながら現場を進めております。この業界に入ったきっかけは、家族が皆、土木の仕事に関わっていたからです。祖父、父、母、姉と土木一色でしたので、必然的にこの道を選びました。
また私ごとではありますが、出産と子育ても経験しており、会社の制度を使い、1年間の産休・育休を取りました。その後、現場の施工管理として復帰し、保育所と現場と家のトライアングルを形成しつつ、現在に至っております。
今後の夢としては、仕事面では「角崎に任せたら心配ないな」と言われるような技術者になりたいです。そしてその先は、海外でゆっくり過ごせたらと思い、今、頑張って仕事をしているところです。
業界に対する将来への期待は、業界全体が週休二日制に早くなるといいなと思います。そうすれば、子どもとの時間もたっぷり取れるのにと思います。そして、社会が変わっていく中で、自分自身も変化していけるように、仕事に対する誇りと、自分の仕事・現場に夢を持って、これからも成長していきたいと思います。
今回、私を推薦してくださった一般社団法人土木技術者女性の会について、少し紹介させていただきます。当会は、土木学会誌の企画として開催された5名の女性土木技術者による座談会がきっかけで、1983年に発足いたしました。2013年には一般社団法人格を取得し、設立から今年で34年を迎えております。会の活動としては、年に1回の総会をはじめ、北海道、東日本、中部、西日本、4つの支部に分かれ、現場見学会や勉強会、また、学生を対象としたキャリアセミナーなどを開催しております。現在の会員数は、正会員・学生会員あわせて約550名です。
次に、「ドボジョ」のロールモデル集として本を2つご紹介します。まず、当会が独自に発行しています『Civil Engineerへの扉』という冊子です。この冊子は1990年、2006年と発行し、今年約10年ぶりに新しく発行しました。14名の会員がロールモデルとして、仕事への情熱や家庭との両立について語っています。
もう一つは土木学会が出版し、当会が編集協力した『継続は力なり』という書籍です。現役の土木技術者を目指す女子学生、そして女性たちを支援する周囲の方に向けた本です。この本には、問題解決の参考となるたくさんの事例や、背中を押してくれるメッセージなどが詰まっております。女性だけでなく男性の方にもぜひ読んでいただければと思います。

角崎 由貴子氏 大成建設株式会社 四国支店 (一社)土木技術者女性の会

角崎 由貴子氏
大成建設株式会社 四国支店
(一社)土木技術者女性の会

木村:
私は、(株)村上組に平成4年に入社し、今年でちょうど25年になりました。1年目は土木部の事務に配属され、現場からあがってきた見積書などを作成したり、いろいろな書類を整理したりという仕事をしていました。2年目からは、総務部で経理の業務にたずさわり、売掛の管理や決算書類の作成など、いろいろな経理関係の事務を経験しました。平成16年からは経理業務に加え、給料計算などの労務関係の仕事もやるようになり、現在に至ります。
私は今、女性社員が主に行っているこの事務職という仕事の魅力を伝えるにはどうすればいいだろうということを考えています。1年目の土木の事務から、その後の経理事務といろいろな事務を経験してきて感じたことは、私自身はとても事務に向いているということです。
裏方の仕事ではありますが、人よりも丁寧に素早くこなすことを目標に頑張ってきて、現場の方や上司からも幾度となく褒めていただきました。そういった事務の仕事に魅力を感じてもらうにはどうすればいいかということを、今日、参加されている皆さんにいろいろとお聞きしたいと思っています。

木村 みゆき氏 株式会社村上組 総務部主任 (一社)香川県建設業協会

木村 みゆき氏
株式会社村上組 総務部主任
(一社)香川県建設業協会

日下:
私は入社3年目になりますが、入社してすぐに現場に配属され、現在は4つ目の現場を担当しています。これまでは現場の安全管理や施工記録写真の作成などを行ってきましたが、今年の4月の現場からは図面を担当するようになりました。図面を書きながら現場監督として長く働けるような取り組みを会社が始めてくれたことで、私が入社してから、女性現場監督が4人に増えています。また、女性の現場監督と建築事務方が定期的にミーティングを開く機会をつくり、働き方や悩みなどを共有して働きやすい環境をつくろうと取り組んでくれています。そのようにバックアップしてくれている会社に応えようと、今、必死で仕事をしているところです。

日下 花菜氏 株式会社合田工務店 (一社)香川県建設業協会

日下 花菜氏
株式会社合田工務店
(一社)香川県建設業協会

出水:
私が勤める大協建工(株)の本社は香川県にありますが、私は愛媛県の松山支店から参りました。当社は、壁や天上にLGSという軽量鉄骨で部屋の空間や間仕切りをつくる、内装仕上げを主に行う会社です。現場では『軽天屋』さんと呼ばれています。経験年数は4年になります。地元の松山では、100人程度の大きな現場でも、女性がいる割合は1、2人いるかなというくらいで少ないという実感があります。ですので、同じ女性がもっと活躍できる現場になったらいいなと思っています。

出水 なつよ氏 大協建工株式会社 (一社)全国建設室内工事業協会

出水 なつよ氏
大協建工株式会社
(一社)全国建設室内工事業協会

畠中:
私は平成6年に大成建設(株)に入社して本社の土木設計部の配属となり、全国のトンネルの設計と施工を担当していました。トンネル、土木に従事していたのですが、3.11の震災以降は福島の復興や原子力発電所といった方面の職に就いています。私が入社した頃は寿退社が当たり前の時代でした。「結婚したら退社する」「3年目までに退社する」という時代で、結婚しても会社に居座ったのは私が初めてです。その頃は出産も私が初めてで、会社の制度として育児休暇はあったのでしょうが、誰も取ったことがなく、「どうするの?」という感じでした。それで私は、育児休暇をもらうこともできず、有休を消化しながら両立させていました。「こんな会社、どうなるんだろう…」と思っていました。それが今、まだ私が在籍しているときに、働き方改革だとか、時間短縮だとか、育児休暇を男性もとろうという時代になって、世の中が良い方向に変わってきたなと思います。もっと女性が働きやすくなればいいなと思っています。
私は日建連の推薦により来ましたので、日建連の紹介をさせていただきます。日建連は日本建設業連合会といい、全国の総合建設業を含む約140社からなる企業体です。本部を東京に置き、全国9支部で活動しております。平成27年には、「けんせつ小町」という委員会を立ち上げました。女性を増やしていこうという国交省の考えに基づき、日建連としても担い手確保と生産性の向上を掲げ、女性20万人にどう入職していただくかを目的に活動を行っております。
アクションプランを定め、技能者を5年以内に倍増、管理職は5年で倍増、10年で3割に引き上げるという決意をしております。「けんせつ小町」のロゴも募集し決定しました。土木、建築、事務など建設業に関わるすべての女性の皆さんを「けんせつ小町」として、明るい建設業を立ち上げていこうとしています。
日建連自体は、建設業ということで男性の委員が多いのですが、平成27年に立ち上げた「けんせつ小町委員会」は、40名の委員のうち、25名が女性で構成されています。女性の活躍に対して、いろいろなアクションプランを掲げ、今年3年目に入っております。いろいろな活動を行っており、一昨年度には「けんせつ小町活躍推進表彰」を創設しました。これは女性が建設業で輝いて働けるよう、応募していただいたいろんな活動を表彰しているものです。昨年度の例を挙げますと、(株)長谷工コーポレーションの埼玉県浦和市の工事事務所は、営業からメンテナンスまで、すべて女性が関わっていて、仕事に男女の差はないということをアピールする現場でした。所長も女性、職長会の会長も女性で、最優秀に選ばれました。
また、帯広市で工事を行う大成建設(株)は、人口も減り、若者もどんどん都会に出ていく中、なんとかしようと、未経験の女性を現場で採用し、工事係として1、2年かけて育てていくという、地域創生への貢献にも取り組んでいるという現場でした。五洋建設(株)は、男性でも作業の場所が少ない海の上で、女性が活躍できるように環境を整えたということで表彰を受けています。
今年からは日建連の会員企業でなくても応募できるようになりました。表彰されることが目的でなくても、ぜひ皆さんも取り組みを応募していただけたらと思います。皆さまの活躍や取り組みを全国に広げて、ぜひ女性の活躍のPRになればと思います。

畠中 千野氏 大成建設株式会社 原子力本部 原子力土木技術部課長 (一社)日本建設業連合会

畠中 千野氏
大成建設株式会社
原子力本部 原子力土木技術部課長
(一社)日本建設業連合会

籠田:
それではご当地の四国地方整備局の建政部計画・建設産業課長の橋本貴央さんに、この地区の女性活躍のトピックスをお話しいただけたらと思います。お願いします。
橋本:
四国地域のトピックスということでは、皆さんもご存じかもしれませんが、高松市の廃校になった小学校を利用し、内装工事の設備業者10社が集まって、「職人育成塾」という職業訓練校を昨年から立ち上げました。その第1期卒業生の女性が国交省主催の作文コンクールで国土交通大臣賞を受賞されました。お子さんも2人いらっしゃるのですが、会社の理解があり、子育ての時間を確保しつつ、入職1年目から現場で活躍され、仕事と子育ての両立ができているということです。彼女自身、将来的には職長をやりたいと作文の中でおっしゃっています。環境整備が整っていれば、そういった目標をしっかり持って、業界で働く女性がどんどん増えてくるのかなと思った次第です。
◆「女性の私もやってみたい」と入職を促すPRが必要
籠田:
男女が一緒に技術を身につけていくことができる「職人育成塾」というのは、いいですね。さて、建築や土木、建設に進む女性が今すごく増えています。私の時代にも少しはいましたが、本当に少ない数でした。私が一級建築士を取った20数年前は、男女の合格比率は、女性が5パーセント、男性が95パーセントでした。それが今では、女性が21パーセントです。そして皆さん、想像していただけると分かると思いますが、女性はきっちりと勉強して合格しています。そのような女性たちだから、この業界での活躍を大いに期待できます。今、高校も大学も女性がすごく多いと聞いています。ではここで、最近この業界に入られた方に、どのような学生時代だったのか、また、入職の経緯をぜひ聞かせていただきたいと思います。
日下:
私はものづくりがとても好きで、昔から建築番組などをずっと見ていました。大学受験のときもそれをモチベーションに勉強し、就職活動のときもその気持ちは変わりませんでした。そして現場にたずさわりたいという思いが強かったので、今の会社に入社を決めました。
「職人さんは怖い」「すごく大変な仕事」などと周りからよく聞いていたので、入職するまでは不安が大きかったです。実際うまくいかないこともありますが、どうにかおさめられたときの達成感や、日々変わっていく現場の様子に立ち会うことができてすごく楽しいです。しかし、そのような仕事であるということがまだまだ分かりづらく、男性社会というイメージも強くあるので、積極的な広告や情報を発信していくことで、女性の現場監督も増えていくのではないかと思っています。
籠田:
壊してつくるというような現場のテレビ番組を見て、「私もやってみたい」と思うのは、自然な流れですよね。建築はどこで学ばれましたか?
日下:
大学の住環境学科で4年間勉強しました。
籠田:
女子大卒と言っていましたが、女性だけの大学の建築学科で学び、そして今、現場管理をされているのですね。今では、そのようなことが普通にあるということですね。今、入社3年目だそうですが、「石の上にも3年」は、私がすごく大事にしている言葉です。3年も経つと甘いことはなかなか言えなくなります。甘えられなくなり、責任もちょっと重くなると思いますが、そのあたりで今感じられていることはありますか?
日下:
去年までは聞けていたことがだんだんと聞けなくなったり、職人さんにも甘えることがだんだんとできなくなってきました。今がちょうどそのときです。責任も少しずつ大きくなっているのを感じるので、これまで働いてきた中で、今が一番必死です。
籠田:
まず一つは、入職に関してもっとお金を使ってでも、「現場の素晴らしさ」「建設業は男女共に働ける場所だ」ということをもっとPRしたほうがいいということ。それと同時に、3年目、4年目が実はだんだんと苦しくなる時期なので、そのタイミングで技術やコミュニケーションスキルをアップさせるためのサポートがすごく大切になってくる、ということですね。
ではもう1人、今年4年目を迎えられる出水さん、現場の職人さんとして働いていらっしゃいますが、どのような経緯で職人さんになられたのか、ぜひお願いします。
出水:
もともと私は接客業のアルバイトをしていたのですが、あるとき休職して、休職中の人が学んで役立つ資格を取るという職業訓練校に通い始めました。そこで主にCADや溶接などの工場で生かせるような内容を学びました。溶接などでものづくりをしているときに、通りかかった現場を見て「かっこいいな」と思い、実際に自分でもつくってみたいという思いが強くなり、働こうと思いました。
でも、最初は求人がなかなかなく、友達の紹介で探してみたものの、1社目は「女の子は無理かな」と断られました。今の会社は「取りあえず、やってみたらいいんじゃない?」という感じで採用してもらえましたが、最初はあまり期待されていなかったと思います。けれど、今では高所作業車や玉掛けなどの資格を取らせてくれたり、任される仕事も増えてきました。とてもやりがいを感じています。
籠田:
いろいろな特別教育を受ける機会をちゃんといただいて、技能も技術も身につけていらっしゃるということですね。実は私は大工さんになりたかったのですが、なれなかったんですね。
ところで、今、現場では、女性と男性の職人さんのお給料に、差はありますか? どのような給料事情でしょうか?
出水:
入社当初は男女の区別はなく、あとは自分のやる気次第です。男だから女だからといって、給料形態は変わりません。
籠田:
差はないのですね。もう今はいろんなところで、そのようになっていると思います。建設現場の技能者になっていく醍醐味はすごいですよね。確実に食っていける、食わせていくことができますからね。これはすごいと私は思います。
私は今年の9月に、アメリカに視察に行ってきました。女性の職人さんを育てる非営利団体が、アメリカ政府のノントラディショナル・ロングターム・キャリアアップ・システムを実践しているということで行ったのですが、そこで学ばれている皆さんは見事に職人になっていました。最初はインターンながらも200万円台ぐらいのお金をもらって学んでいるそうなのですが、その後は倍の400万円〜500万円、数年たったら1000万円級の職人さんになるそうです。日本とアメリカでは技術者に対する評価に違いがあるとは思いますが、建設業の女性活躍の一つは、一級建築士などのさまざまな資格をとること、そして資格と同時に技能を身につけていくことでしっかりと収入を確保できることだと思います。出水さんは、素晴らしい仕事を見つけられたと思います。そして入職に関しては、たまたま、仕事をどうしようかなと思っていたときに、町を歩いていてかっこいい職人さんを見て、出水さんも「私もなりたい」という思いがチラッと芽生えた、と。先ほど、日下さんもおっしゃっていたように、PRが足りないという感じですね。
では、今、総務の仕事をされている木村さんは、女性の採用や入職に関して、何か工夫されていることはございますか?
木村:
私の会社では、採用の時に女性だから事務職専門という形では採用していません。面接で本人にやりたい仕事を聞いて、その要望を優先してくれます。それでも、建設業への女性の希望者が少ないために、退職者が出た時には社員の家族や知り合いの紹介で入社することが多く、新卒についても、男性の事務職員の採用はありましたが、女性の事務職員はここ数年入社していません。
籠田:
事務職が女性・男性のどちらに向いているかはさておき、建設産業に対してのイメージを積極的にアピールしていくのは、現場、事務、設計など、どの職種にも共通ですよね。今、入職に関してのお話を聞いていますが、入職に関して良いアイデアはないでしょうか?
私自身の話をしますと、私は北九州市ですが、佐賀や福岡から、わざわざ我が社に女子学生がインターンシップに来ることから、女子学生のインターンを受け入れる企業がまだ少ないことに気が付きました。非常にもったいないと思います。インターンシップというのは、マッチングする一つの機会です。もちろんスーパーゼネコンさんはその態勢を取られていると思いますが、地元密着の中小企業もインターンの受け入れ態勢を取っていくことが一つ、提案としてあるのではないかと思いました。
今、少しずつではありますが女性の入職が増えていて、本当にうれしいことです。でも、ネックは定着しないことです。女性社員のアンケートで見ると、3、4年後の定着率は約半分です。唯一、技能者だけ定着率は高いのですが、女性技能者はもともと人数がとても少ない。事務や技術職の女性たちが仕事を続けられないことが、私は問題だと思います。
ここで、子育てをしながらお仕事を続けていく工夫、そして苦しさをお聞きしたいと思います。
◆周囲の理解や上司の意識改革が定着につながる
角崎:
私には今年、小学校に上がった娘が1人います。まずここに来るまでに、保育所に入れるかどうかという壁がありました。私は運良く家からも実家からも近い保育所になんとか入ることができて安堵しました。保育所には5年間通わせましたが、本当に楽でした。保育所に預けているという安心感と、家が近かったので、家・保育所・現場のトライアングルを形成してしまえば、なんとか乗り越えられました。小学校に上がると、さらに小学校の壁というものがあります。小学校は保育所と違って、学校行事が平日にあります。平日にあるということは、業務を誰かに引き継がなければなりません。引き継ぎをお願いすれば、断られることはほとんどありませんが、引き継ぐときの心苦しさといったら…。あと、総体的に考えますと、技術職も人数不足なので、1人にかかる負担はとても多いです。ですので、子育てをしていようが、任される業務はやはり増えていきます。任されたらやり切るという自分の性分も障害をつくっているとは思います。家庭での母という立場との両立も大変です。正直、先が見えないので、日々だましだまし、「明日はきっといいことがある」と思いながら、こなしているのが現状です。
籠田:
本当に頑張ってらっしゃいますよね。先ほどの現場の事例といい、角崎さんがもしも「もうちょっと無理だ」と思ってしまったら、本当にもったいないことです。そんな気持ちになりながら、お話をお聞きしていました。
「ロールモデル」や「メンター」という言葉が、女性が活躍するためのキーワードになっています。「ロールモデルはいますか」「メンターはいますか」というアンケートを取ると、入職後5年未満の人では7割ぐらいが「います」と答えます。けれど、5年から10年、10年から15年になると、「います」という人の割合がガクンと減ります。
仮設ですが、入社当時の独身女性に対してはありとあらゆる人がいろいろな指導をしてくれて、相談に乗ってくれる。でも、子育てをする女性に対しては、「あなたには子どもがいるんでしょ? 子どもがかわいそうだね」「子どもがいるのに、どうなの?」というような、なんともいえない態度になり、今までアドバイスをしてくれていたロールモデルやメンター、人生の先輩と思われてきた人との関係性が急に変わってくる。そのようなことが起きてきているのではないかと思います。
先ほど角崎さんがおっしゃっていましたが、「5時だから帰れ。お前は母親なんだから、仕事をするな」と言われると悲しい。一方で、「これはお前に任せたぞ」と言ってもらえるとうれしい。でもこれが毎日となると、やはり子どものことがあるので苦しい。そんなときは、角崎さん、なんて言ってほしいんでしたっけ?
角崎:
「はよ、帰れ」と。
籠田:
そう、これが本音ですよね。角崎さんは甘えない人なので、いつもそう言われたら、「私をなんだと思ってるの!」と怒ってしまうかもしれませんが、週休2日とか、たまには「早く帰れ」といったちょっとした配慮をしてもらえたら、それだけでだいぶ楽になるということだと思います。これは身近な先輩たちがするべきことだと思いました。
では、ぜひ畠中さんにも、「定着していく」「続けていく」ための秘訣・工夫をお願いしたいと思います。

建設産業女性活躍セミナー in 高松

 

畠中:
私は今まで完全に男になり切っていましたので…。容赦なかったですからね。角崎さんと同じように「帰りたい」なんて思ってしまうと、仕事がダメになるので、必死に食らいついていました。「本当に子どもがいるの?」と言われるぐらい会社漬けでしたね。私の周りの先輩たちは、なかなかそれができなくてやめていきました。しかも景気が悪くなって、私より下の10年ぐらいは採用がありませんでした。建設業界に冬の時代があったので、今、女性管理職の予備軍がいない状況です。国は「女性管理職を増やす」ことを掲げていますが、難しいところです。
土木技術者の会の中で聞くお話ですが、企業として女性管理職を増やすという数字を追いかけるために、女性だからとちょっと早く管理職になっていることもあるようです。それが逆に変なプレッシャーとなり、「無理かな」と挫折してしまう女性が出てきているとのことです。
労働環境だけでなく、精神的な理由でも、せっかく20年頑張ってきたのに、定着があやしくなっている女性が出てきているということです。定着については、「どうしたらいいものか」と、本当にみんなが悩んでいます。女性も男性も悩んでいると思います。
あと、現場の中で男性・女性を区別する点については、管理職の無意識の偏見があるように思います。「女性にはこれはきついかな」と言ったり思ったり、「子どもがいるから出張は無理だろう?」という言い方をしたり…。でも女性本人は、「今回は無理でも、次回は行きたいので家でやりくりします。だから、一回一回聞いてほしい」という気持ちです。また「これは重たいから他の人にやらせよう」も、思いやりで言ってくれているのでしょうが、その場に男女が2人いて、男性のほうに「運んで」と頼んだら、「え? 私はやっぱり期待されてなかったんだ…」と女性は思い、だんだんと心が折れていきます。定着させるためには、リーダー、管理職の人が、部下に対して、無意識のうちに男女の区別をせず、「運べるか? 運べないか?」「今日、夜勤できるか? できないか?」を個人として尋ねる。そういった意識改革が、定着につながっていくと思います。
籠田:
いい話ですね。「ジェンダー」という言葉がありますが、性別で役割を決めつけることが、どのように根付いてきたのかを調査すると、1つは家庭環境です。「我が家はこうだから」ということです。そしてもう1つは、「世間がそうだから」ということです。自分は思っていないけど、周りがそうしているからです。業界団体の方が世間をつくっていると思います。ぜひ業界団体の皆さんには、女性のリーダーをどんどん表舞台に立たせていただきたいと思います。女性の委員会を立ち上げ、女性が前に出て、男性の皆さんに、男性が知らないことを話す。本日もこのような機会をいただきましたが、こういった場がとても大事だと思います。
畠中:
日建連も本当に縦社会で、専務、常務など委員会の上のほうの人が発言されると、男性委員は「そうだ、そうだ」という感じです。でも女性委員はそんなことお構いなしに、「あのねぇ…」といった感じです。他の男性社員が、「ちょっと、専務に何言うの!」と止めますが、女性は「委員会なんだから、ちゃんと言いたいことを言うのが当然でしょ」といった具合です。そういったところが男女で全然違います。いわゆる男性は「縦」、女性は「横」です。日建連の上の方々も少しずつお感じになってきているようで、ご理解くださる方も増えてきています。
籠田:
なるほど。おもしろいですね。建設業の良さを伝えていくのは、「布教」と同じだと思います。布教とは、「布」という字を書くように、縦糸と横糸をつないでいく。「これまではこうだった」という常識もとても大切ですが、新しい風を受け入れることも大切です。これがやはり魅力的な団体といわれる、一つの由縁かなと感じます。
会場の皆さんからも、意見や感想、質問等をおうかがいできればと思うのですが、いかがでしょうか? 女性の活躍をどのようにとらえているか、また、パネラーの方に質問、感想などお願いします。
◆女性活躍推進の鍵を握る経営者の覚悟
男性:
女性の活躍には、一緒に働く男性の理解や協力が重要だと思います。個人レベルで進めていくのはなかなか難しいので、トップダウンで行う必要があると感じています。パネラーの皆さまで、組織のトップの意識がここ数年でどのように変わってきたか、感じていることがあればお願いします。
木村:
我が社は現在40代の社長になっております。私が入社した平成4年頃は、時代がまだ男性社会であったために、女性は裏方のような仕事がほとんどでした。現在の社長に変わってからは、「女性にも男性社員と同じように活躍してもらいたい」ということで、女性の意見を聞いてくださり、それを取り入れてくださっています。また、トイレに花を飾ったり、玄関を常にきれいにと掃除したりと女性ならではの細やかな気配りをちゃんと見ていて労ってくれます。今の社長は、女性が気付かないようなことにもとても気を配っており、社員にも「目配り・気配り」が重要と常に言っています。ですので、男性女性関係なく社員一同が、仕事だけではなく、職場環境についても工夫しながらやっています。
籠田:
今私は3年ぐらい前から中小企業の経営者の方に講演をさせていただく機会が増えたのですが、全国を周っていて、気がついたことがあります。昔の日本はトップダウン型の経営がほとんどだったと思うのですが、トップダウン型の経営者ほど、目覚めたときの変わり方がすごいのです。私の講演での話を聞いて「そうか!」と思った経営者の方が、昨年、国土交通省のベストプラクティスで表彰されました。それも4社か5社のうち、半数がそうでした。私の話を聞いて「そうか!」とパッと変えられたそうです。ですので、トップダウン型のリーダーシップをとっている経営者の覚悟がとても大事ではないかと思いました。
女性:
私は建設業の経験はなく、最近関わるようになりました。今日、お話を聞いていて、とても時間のかかる業界なんだなという印象を持ちました。もともと私が関わっていた仕事は、倉庫業です。採用から何カ月かすれば、仕事はある程度こなせるようになります。けれど、建設業は採用から最低3年はかかるということで、大変だなと思いました。特に香川県は、若い人が少なく、仕事も全国の3パーセントぐらいしかありません。ですので、なんとか仕事を取ってきても、人がいなくて結局できなかったりします。どうしたら採用した人に長く続けてもらえるかということに随分悩んでいるところです。
今、この業界に関わって感じていることは、トップダウンで、女性に活躍してもらわないと、この先はないということです。若い人が非常に少ないのですが、若い人が入ってくださらないと会社としても先が続きません。女性の方でも、土木や建設業にすごく関わりたい、非常にこの業界が好きだという人と一緒に働きたいと思います。本日のパネラーの皆さんも、「親御さんがこの業界に関わっていた」「どうしてもこの仕事がやりたい」「職人になりたい」「技術を身につけたい」という方ばかりで、自分の考えが合っていると思えてうれしかったです。
籠田:
とても大切なことですね。若い人が入職してくれないと、この産業は続きません。たくさんの若い人の入職が、女性の入職のための一つのカギでもあるのかなと思います。
わが社は女性2人で一つの現場を見るというワークシェアリングをしています。取引先の人には「こんなことをしていたら、会社がつぶれるよ」と言われていました。「1人でできることを、2人も3人もかけてやっていたら、絶対もうからないでしょう」ということです。しかし、私は「そんなことはないはず。なんとかして、絶対に会社をつぶさないでやっていく」と続けて、今に至ります。今では職人さんたちが思い出し笑いをしながら、「もう、ゼムケンはなくなると思ったけどなぁ」と言うようになりました。女性が普通に働ける現場になれば、誰もが働ける現場になるというのが私の考えです。これからも希望を持ってやっていきたいと思います。
出水さんは、きつい、汚い、危険の3Kと言われているこの業界について、「きついはやりがいがある。危険は安全へ取り組むことができる。汚いはかっこいいと思える自分でありたい」というようなことを事前アンケートに書いてくださっています。出水さんのような女性をどんどん発信して、これからの未来、香川県、四国の皆さんが、お互いを支え合うような建設産業になったらいいなと思いました。
では最後に、先ほど講演いただきました国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課長の出口陽一さんに、総括でコメントをいただきたいと思います。
出口:
生のご意見に「なるほどな」と思いながら、聞かせていただいていました。皆さんの生の声が、ほぼ正解であり、それに向けて頑張っていかなければいけないなと思っています。個人的な感想を述べさせていただきますと、まずは情報をどう発信していくか。そして中身として、何を発信すればいいのか。取り組みはいろいろとご紹介させていただきましたが、やっぱり足りないのだと思いました。「入る前はイメージが悪く、不安もあるけれど、入ったらものづくりは達成感がある。」と、入職した皆さんにはおっしゃっていただけます。それを入職前の方にどう伝えるかを考えなければいけないと思います。
ただ、役所が一番苦手なのはPRです。情報発信に、ぜひ皆さんのお知恵を拝借させていただけるとありがたいなと思います。
そしてもう一つ、出産・子育てで、とても苦労したというお話がございました。男性の育児参加など、建設業に限らず、他の産業でも問題となっていることも多々あると思います。そもそも男性が育児にちゃんと参加する、あるいはワークライフバランスをちゃんと考えるということは、女性の活躍だけにとどまらず、男性のワークライフバランスという意味でも必要だなとあらためて感じました。お話にあったように、同じ人でも「今日は残業できないけれども、明日はできる」ということもあり、常日頃からできないというわけではありません。個人的にその時々で確認してほしいというご意見がありました。まさにこれは、経営マネジメントの一番大切なところです。男女にかかわらず、人を雇用して、貴重な人財にどのように働いてもらえばいいかというヒントが、凝縮されているご意見だと思います。
特に最近の若い方は我慢がないとよく言われていますが、こまめにケアをしてあげると、粘り強くやってくれたりします。例えば職業訓練などは、昔は「親方・先輩の背中を見て育て」でしたが、最近は「こうやって、ああやって、こうすればできるんだよ」と教えてあげると、しっかりついてきてくれます。そのあたりも含めて、男女というよりは、一人ひとりを見てしっかり育てたり、定着させたりしなくてはいけないんだなとあらためて感じました。
これは、むしろ経営者の方、特に中小企業のトップの方の意識改革が大事かなと思います。いろいろなアンケートでも、なかなか固定観念から脱していない経営者の方がいらっしゃることを感じています。ぜひそこを脱していただきたいです。さまざまな工夫をすれば解決できるということを、いろいろな事例から分かっていただけるといいなと思います。
担い手の確保は、他産業との競争です。例えば介護業界も人が足りないと、必死で雇おうとしています。介護はとても重労働です。でも、女性も多く就労しています。そこで、工夫をしているのです。例えばおじいちゃん、おばあちゃんを抱えるときに腰に負担がくるため、パワースーツを使っています。そのようなちょっとした工夫で、女性でも十分、男性と同じように働くことができるのです。固定観念を少しずつ変えていくのは、経営者次第だと思います。
ぜひ今日お越しいただいた方々には、建設業界で輝く女性たちの活躍の意義や方法を、周りの方に布教活動をしていただけますとありがたいなと思います。

建設産業女性活躍セミナー in 高松


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