建設産業女性活躍セミナー in 広島

建設産業女性活躍セミナー in 広島建設産業女性活躍セミナー in 広島

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開催日時
平成29年11月8日(水)
14:00〜14:30 基調講演①
14:30〜14:45 基調講演②
14:45〜16:00 パネルディスカッション
16:00〜17:00 名刺交換・交流会
開催場所
RCC文化センター
基調講演①
「建設業を女性の一生の仕事に〜男女共創の幕開き」
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役 籠田淳子氏
基調講演②
「最近の建設産業政策について」
国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課 政策係長
鈴木 悠紀氏

パネルディスカッション

テーマ
「建設産業において、さらなる女性の入職及び定着を促進するためには」
概 要
○コーディネーター

籠田 淳子氏
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役

○パネリスト

大之木 佑美枝氏
大之木建設株式会社
(一社) 広島県建設工業協会
春日 優子氏
株式会社竹中工務店
(一社) 日本建設業連合会
小西 美保氏
株式会社伏光組
(一社) 広島県建設工業協会
佐藤 陽子氏
山崎建設株式会社
(一社) 全国中小建設業協会
廣田 りつ子氏
中国電力株式会社
(一社) 建築設備技術者協会 設備女子会
鈴木 悠紀氏
国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課
政策係長
佐々木 高志氏
国土交通省 中国地方整備局 建政部
計画・建設産業課長

 

パネルディスカッション

建設産業において、さらなる
女性の入職及び定着を促進するためには

 

籠田:
パネリストの皆さんには、「今のお仕事について」、また「どのような現場に行かれているのか」や「周りにいる建設業界の女性の状況」など、お話しいただきたいと思います。ひょっとしたら、これは…というエピソードが飛び出すかもしれません。私がなんでもお話しいただきたいとお願いしましたので、どうぞパネリストを責めないでいただきたいですね。よろしくお願いいたします。

籠田 淳子氏 (有)ゼムケンサービス 代表取締役

籠田 淳子氏
(有)ゼムケンサービス 代表取締役

◆建設業界に入職した経緯や仕事内容など〜自己紹介を兼ねて

 

大之木:
私は、広島県呉市にある大之木建設(株)の建設本部設計部に所属しており、小規模建築の設計業務に取り組んでいます。事務所でパソコンとにらめっこの毎日なのですが、工事管理でたまに現場へ行くこともあります。
春日:
私は、日建連のけんせつ小町委員会の広報専門部会の部会長を務めております。本日は日建連の推薦で出席させていただきました。大学院で建築学を学んだ後、技術研究所の研究員として(株)竹中工務店に入社しました。約12年間の研究員生活を送り、その後設計者として約9年、商品企画担当として1年、そしてこれまでの経験を踏まえ、現在、お客さま満足度に関わる業務を担当する部署に3年ほどになります。
日建連では「もっと女性が活躍できる建設業を目指して」ということで、さまざまな取り組みを行っており、けんせつ小町の活動も、今年で3年目になりました。2014年に女性技能労働者活用のためのアクションプランを取りまとめ、そして「もっと女性が活躍できる建設業を目指して」という決意を策定したことが活動の背景となっています。
「けんせつ小町」とは、建設や土木の現場で働く技能者や技術者だけではなく、内勤の営業担当者、設計者など、多岐に渡り、建設業で働く全ての女性の愛称です。ロゴマークは、ヘルメットをモチーフに花びらに見立てたマークとなっています。
具体的な活動として、まず建設業界でも女性が活躍していることを広く知ってもらうために、フォーラムを開催しています。外部講師による基調講演や、「けんせつ小町」によるパネルディスカッションを実施しています。
また建設業界における女性の活躍を推進する一環として、会員企業社員を対象に「けんせつ小町セミナー」を定期的に開催したり、「決めない会議」ワールドカフェという形式での、情報交換会も実施しています。そして、会員企業の取り組みを表彰する表彰活動もしています。
この他、地域のネットワークと意見交換会を実施したり、けんせつ小町工事チームの登録制度をつくり、ホームページなどで、こんなにも女性が活躍していることをアピールしています。年々、工事チームの登録数は増えてきています。
そして、将来の「けんせつ小町」のために、夏休みに小中学生の女子向けに現場見学会を行っています。こちらも毎回、大変好評で継続して行っています。
また今年の4月には、ホームページを大幅にリニューアルしました。ホームページの中でさまざまな仕事を紹介しています。「けんせつ小町」で検索していただくとトップページに飛べますので、ぜひご覧になっていただけたらと思います。

大之木 佑美枝氏 大之木建設株式会社 (一社)広島県建設工業協会

大之木 佑美枝氏
大之木建設株式会社
(一社)広島県建設工業協会

小西:
私は、広島市の総合建築企業である(株)伏光組よりまいりました。現在、総務部の事務員として、入力業務を主とした雑務全般を行っています。
佐藤:
私は、石川県金沢市の美術系の大学を卒業し、今は、父親の会社であり兄が継いでいる福山市の山崎建設(株)で働いています。父からは、1級建築士の資格を取れと子どもの頃から言われていました。けれど、数学がちょっと苦手でしたので、美術系で1級建築士の受験資格をもらえる学校を探し、美術の学校に行きました。
卒業後は、アパートの設計施工管理を行う会社でしばらく働き、26歳のときにこちらに戻り、ほぼ一から勉強しながら今に至ります。現在は、住宅の小修繕から小学校の耐震改修などの現場代理人主任技術者として、現場監督をしています。

佐藤 陽子氏 山崎建設株式会社 (一社)全国中小建設業協会

佐藤 陽子氏
山崎建設株式会社
(一社)全国中小建設業協会

廣田:
本日は建築設備技術者協会の設備女子会の推薦で、参加させていただきました。私は1999年に広島県内の大学の建築科を卒業し、中国電力(株)に入社しました。「電気を売っている会社の建築技術者ってどんな仕事をしてるんだろう?」と、皆さん思われると思いますので、少し紹介させてください。
入社後14年間は、基本的に中国電力が所有している建物に限定した設計と工事監理をしてきました。中国電力本社ビルの空調の熱源改修工事や、蓄熱受託設備を大型商業施設に設置する熱供給事業の工事にたずさわったことがあります。また、中国電力の営業所や電力所に設置してある空調のリニューアル工事を担当していました。36歳のときに社内で異動があり、今は教育、品質、安全に関連する仕事をしています。若手社員向けに建築技術を教える講師や、建築関係の資格取得の支援、現場に出向いての安全パトロールなどです。
プライベートでは、現在、中学3年生と小学3年生の2人の女の子の母親です。26歳のときに結婚して、下の子が小学校に入学するまでの間は時短勤務を利用しながら、ずっと働いてきました。私は仕事をする時間も大好きですが、子どもと過ごす時間がもっと好きです。
そこで、どうしたら子どもと過ごす時間を増やせるか、真剣に考えて行動に移してきました。通勤時間がもったいないということで、会社の近くに引っ越してみたり、親には実家を処分してもらい、近くに呼び寄せたりもしました。東京へ出張の際には、子どもを一緒に連れていき、霞が関の保育園に預かっていただいたりもしました。皆さんのお力添えをいただき、仕事と子育ての両方を楽しんでいたいという欲張りな生き方を、ただいま実践中です。
またライフワークとして、建築設備技術者協会の設備女子会で活動をしています。設備女子会は、今後ますます増えていく女性設備技術者の情報交換・発信の場を設けることで、女性の活躍の場を広げ、一層社会に貢献していくことを目的に、2012年に発足しました。現在の会員は全国で600名以上であり、中国・四国支部に限定すると45名まで増えました。支部の活動については、「設備花子ちゃん」というキャラクターがいて、この子がFacebookで発信しています。スマホで「設備女子会 中国・四国支部」と検索していただくとご覧になれるかと思います。
この会では、面白いことをたくさんしておりますが、昨年は、国土交通省さんと吉本興業さんのコラボレーション企画で、広島大学建築学科の学生向けに出張教室を行いました。芸人さんが会場をおおいに盛り上げ、建築設備の仕事のやりがいや魅力だけではなく、苦労話といった生の体験を自分の言葉で学生に語りかけることができました。また質問タイムでは、学生から直接質問を受け、答える立場の私が逆に学生から刺激を受けるような時間となりました。この活動は広島大学だけではなく、山口大学、岡山理科大学など、さまざまなところで展開し、好評を得ています。設備女子会では、各社で同じような立場で働いている女性同士のつながりを重視し、交流できればと思っています。また、皆さまには、建築設備技術者協会を含む設備女子支援ネットワークが作ったアンケートの取りまとめをお配りしています。私たち女子の思いがギュッと詰まったパンフレットとなっています。女性活躍に関して、いろいろなヒントが詰まっておりますので、ぜひ社内での施策等にご活用いただければと思います。

廣田 りつ子氏 中国電力株式会社 (一社)建築設備技術者協会 設備女子会

廣田 りつ子氏
中国電力株式会社
(一社)建築設備技術者協会 設備女子会

籠田:
ではここで、ご当地の国交省中国地方整備局建政部計画・建設産業課の佐々木高志課長に中国エリアでの女性活躍の状況について、皆さまにお話しいただきたいと思います。
佐々木:
私どもの部署・建政部は、建設業の許可業務や、建設産業の健全な育成に向け、建設業界の適正な契約取引に向けた指導、違法行為・不正行為があった場合の行政処分などを行っているところです。特に近年は、社会保険未加入者対策としまして、社会保険支払いの原資となる法定福利費の確保による建設技能労働者の処遇の向上や公平で健全な競争環境の構築をはかることにより、建設産業の魅力の向上と、将来の担い手の確保、人材育成について積極的な取り組みをはかっているところです。中国地方整備局では、中国地域の建設産業においても、就業者の高齢化が進行しており、次世代への技術承継が危惧されている状況を改善するための一環として、女性活躍に関わる取り組みを実施していますのでいくつか紹介させていただきます。
まず、公共調達における加点評価として、平成28年3月にすべての女性が輝く社会づくり本部で決定した「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」に基づき、今年度から直轄工事においてワークライフバランス等を推進する企業を評価する取り組みを試行的に導入しています。評価対象は、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定企業」、次世代法に基づく「くるみん認定企業・プラチナくるみん認定企業」、若者雇用促進法に基づく「ユースエール認定企業」といった法令にもとづく認定を受けた企業、その他これに準ずる企業です。
それから、誰もが働きやすい建設現場の環境改善に向けた一歩として、建設現場では原則的に快適トイレの導入を図るということを進めております。今年度はさらに快適トイレに求める機能の考え方についても、具体化し、女性目線での付属品等の整備に留意するなど取り組みの質の向上にも努めているところです。
また、多様な情報共有を図る取り組みとして、女性の感性を活かしたよりよいインフラ整備、管理、及び渉外活動を行うための組織の意識向上や、女性間での情報共有を図ることを目的として、平成26年度に「くらしてミーティング」を設立し活動を行っています。「くらしてミーティング」のネーミングの由来は、「暮らしの担い手」である女性たちの会議です。「建設産業で働く女性がカッコイイ」をキャッチフレーズに、女性が活躍できる建設業を目指すことで、男女を問わず、誰もが働きやすい業界にすることで、安心して仕事を続けられるように、入職促進や就労継続などの取り組みとして、現場見学会、出前講座、外部講師による講演会等を行っており、組織としてもサポートが図られるよう努めています。
また地域連携という形では、島根県の「しまね建設産業イメージアップ女子会」が開催する情報交換会に参加するなど、双方の取組について機会をとらえて情報交換を行うなど交流を広げています。
籠田:
中国地方整備局、すごく頑張っていますね。では、ここからはパネラーの方々に、ざっくばらんにお話をしていただきたいと思います。国土交通省では、建設業で働く女性を増やすという目標を掲げています。具体的には、平成24年建設業の女性が約10万人でしたが、その5年後には倍にしていくというようなアクションプランです。しかしながら、現状におきまして、なかなか10万人から数は増えていません。少しずつ増えているのが、職人さんです。女性技能者が少しずつ定着してきている感じです。しかし技術者や営業事務に関しては、採用しても、採用しても、定着していきません。総論でいうと、女性はなかなか増えていないというのが、現状です。
そこで、まず建設業に入職してもらうために、業界に必要と考えられる政策や業界団体が策定する行動計画等、さまざまあると思います。今、いろいろなお話を聞く中で、どんなことを感じられたか、ぜひお話しいただきたいと思います。
◆建設業の魅力を十分発信できていないのは、“もったいない”
佐藤:
私が考える、職を選ぶ際のイメージは、「ああいう仕事がしたい」「あんな人たちになりたい」とあこがれて、入られる方が多いのかなと思います。
最近少し増えましたが、女性に似合う作業着など、外的なものが増えればいいなと思います。私自身、足のサイズが23センチなので、安全靴がなかったり、なかなかSサイズの軍手がなかったりします。現場で必要なものなのに女性用のものがないので、そういうものが一般的に入手しやすくなって、「この作業着可愛いな」「これかっこいいな」という選択肢が広がるといいなと思います。入職と直接関わるかは分かりませんが、イメージの一つかなと思います。
小西:
土木技術者の収入が高収入になり、そのことが世間に広く知れ渡るようになれば、入職希望者も増えると私は思います。
籠田:
かつては建設現場で働いている人を指さして「あんなふうにならないように、しっかりしなさい」というような時代がありました。しかし、今のこの時代においても、建設現場は、お金がなくて学識がない、そんな人たちが働くところというイメージがまだ残っているということをお聞きします。ところが、年収の話でいくと、今年の夏頃にニュースで出ましたが、上場企業の年収トップの産業は「建設業」でした。私もびっくりしました。建設業の上場企業は、年収700万円出さないと人が来ないということかと。そのニュースを見て、逆にすごいなと思いながら、「中小企業の私たちはそんなに年収を払えないし、どうしたらいいのかな」と思いました。
やはり技術を持っていたり、技能があれば、年収は下がりません。実際にこれは強みであり、素晴らしいことなのに、世の中の皆さんにアピールできていないのです。確かに、すごくもったいないですよね。
廣田:
出張教室のように、学校に出向いて、建設業のやりがいや魅力を伝えていくのが有効ではないかなと思います。ただ私たちが出向いた先は大学なので、既にこの業界に関心を持って、将来の仕事にしようと思っている学生が相手でした。できればこれから進学先を選択する世代、女子高生や女子中学生など、もう少し下の世代に向けて、建設業を将来の仕事にしたいと思ってもらえるようなきっかけを与えたいと思っています。
中学生のうちの子もそうですが、反抗期の子に、学校で真面目な話をしても、半分寝ていたりしてあまり響かないこともあろうかと思います。 ただ家では、インターネットの動画をすごく熱心に見ていますので、例えば各企業や団体が、建設業の現場のすごく面白い動画を作り、配信するといいのかなと思います。そこでかっこよく働く女性も登場したりすると、自分もやってみたいと興味を持つ、そんなきっかけになるかもしれないなと思います。
籠田:
情報発信はまだまだいろいろな工夫をする必要があると感じました。そしてまた、発信先も、いわゆる就職直前の女子学生だけではなく、さまざまな世代、いわばご家族の皆さんにも、分かっていただく工夫が必要かなと思います。就職の際のポイントだと私が感じるのは、やっぱりご家族です。ご家族に「いいね」と言っていただけるような工夫を、どこまで業界として私たちができているかが一つです。
そして、「女子力を活かせば伸びる建設業−建設業女性活躍推進相談窓口−」のポスターをご覧になっていかがでしたか? 「女性を活用していきましょう」という、今まで国交省で見かけたポスターは、大変申し訳ないのですが、「どこのモデルさんに作業着を着せてヘルメットをかぶせたんだろう? ぶかぶかだし、絶対に現場にはいないような女性だよね。そして青空のもとで、違和感がある」という印象でした。でも今回のポスターのキラキラモードの女性は、変わってきていると思います。このポスターをどんどん貼っていただいて、アンテナが通じ合う人たちに届くアピールが、とても大事かなと思います。
一方、入職も大事ですが、定着もとても大事です。今、高校生や大学生に、非常に女性が増えてきていますので、当然、建設業への女性の入職率も高まってきていると思います。でも実際にはここからが本番で、やりがいを持ってもらい、続けてもらうことがすごく難しいんです。定着に関しては、春日さんのお話が本当に素晴らしいなと思いました。あえてもう少し定着に焦点をあててお話しいただけますでしょうか?
◆建設業界で“ずっと働きたい”と思える環境づくりが大切
春日:
私が考える定着に必要なことは、女性が働き続けられる環境を作っていくことだと思います。環境といいましても、制度やハード面のトイレなどに限りません。弊社では、入社すると1年間、全新入社員が神戸で寮生活をします。現場採用の人も、事務の人も、設計もみんな一緒に1年間同じ釜の飯を食べます。そして、例えば建築系でしたら作業所、設計部、見積部といったようなローテーションを4カ月ごとにします。そのように寝起きを共にすることで、当然のことながら同期のつながりができます。当時は2人1組の部屋でしたが、寮には7名の先輩社員である寮長さんがいましたので、先輩社員とも、非常に深いつながりができます。また、4カ月ごとの業務のローテーションで各部門を回ることでも、先輩社員と知り合えます。
ですので、大阪エリアで1年間の研修を終えた後、本配属ということで全国に散っていくわけですが、散った先で何かあったときには誰かに相談できたり、困ったことがあれば先輩に教えてもらえる、そういう絆ができます。このような環境が、3Kといわれている厳しい業界で働き続けるためには重要なのかなと思います。
竹中工務店はあまりコマーシャルを流しませんが、皆さまに知っていただけていないという危機感から、社内でCMを作るコンペを行いました。女性でも働き続けることができる素敵な会社だということを伝えたく、私もそのコンペに参加しました。そのPR動画を今日、お見せしたいと思いますが、やはりこういった環境づくりが必要かと思います。このPRビデオは、親御さんの目も少し意識しています。それから、今まで女性はあまり主張してこなかったかもしれませんが、「将来こうなりたいんだ」という姿を、もっと会社や周りにアピールしていっていいのではないかと思います。黙っていると、「この子はこのぐらいの仕事で満足しているんだな」と思われてしまうこともあります。これからはますます女性が「こうありたい」「女性でもこんなにできるんだ」という気持ちをストレートに社会に出していける時代が来ると思いますし、そんな時代が来るのを待っています。
PR動画「設計図(ミライ)を描こう」 https://www.youtube.com/watch?v=HGSwPwy9CTs
大之木:
このCMを見て、ずっと働きたいと思ってくれる人が増えたらいいなと思います。弊社は、女性の社員が少ない呉のザ・中小企業です。ほとんどは事務職で、現場代理人などの現場で働く人の部署もありますが、今のところ、設備が整っていないこともあり、女性の希望者がいません。もっと多くの女性が建設業界に興味を持ってくれたらいいなと思います。
籠田:
大企業はこういったイメージも出せますし、すごくいいなぁと正直思います。私の会社は零細企業ですが、就業規則をきっちり作ったり、裁量労働制などいろんなことに工夫しています。とはいっても、その時々を臨機応変に対応し、お互いさまにカバーしあうという感じです。
先ほど大之木さんとお話しして、大之木さんは独身の視点をすごく持たれていると感じました。私の会社では7、8年前に、独身VS既婚者、子どもがいるVS子どもがいない、というような対立構造がありました。それについて、大之木さんがどんなことをおっしゃったかというと……。

建設産業女性活躍セミナー in 広島

 

大之木:
当社の女性社員は、子どもができるとたいがい辞めます。ですが、ここ何年かは、子どもを産んで復帰する方や、現在お腹に子どもがいる方もいます。先ほど、「誰かが休職している間に仕事を押し付けられるのは、嫌じゃないですか?」と籠田さんから聞かれましたので、私は「やれる人がやればいいと思いますし、皆でやったほうが仕事も早く済みますし、カバーすることは全然嫌じゃないですよ」とお答えしました。
籠田:
建設業で女性を活躍させていく、定着させていくことには、環境整備が必要といわれます。その一つがトイレ。「男性トイレしかない」なんて、そもそもおかしくないですか? 私も、業務が多忙でコンビニエンスストアや、近くの喫茶店まで行けないときには、本当に恥ずかしい思いをしながら、掃除道具を持っていって男性トイレを利用しました。今ではだいぶ改善されてきたとはいいますが、九州ではすごく大きな現場でもいまだにありません。ここは一つ、できる限り速やかに女性専用トイレをつくってほしいと思います。しかも男性トイレとは全く場所を変えていただく工夫も必要です。男性が「女性専用トイレはきれいだから」と言って利用するケースをよく耳にするからです。ただトイレや制度だけじゃなく、言われなくてもそれが当然でしょうと思えるような社風づくりも大切だと思います。やはりこれからの会社や現場は、本当の意味での優しさがとても大切になってくると思います。
私の会社は、女性がたくさんいて、コンパネ(コンクリートパネル。コンクリート型枠に用いられる合板)を女性2人で1枚運ぶんですね。それを見た男性社員は「ペチャクチャしゃべりながら、コンパネ1枚持つのに2人がかりで動くなんて効率が悪い」と最初は怒っていました。でも、女性はしゃべっているからといって、安全性を損なうことはありません。しゃべりながらもいろんなことに気を遣ってやっています。男性は集中するとしゃべらないかもしれませんが、女性は集中するとしゃべり出すんです。このようなことにも男性と女性の違いを少し感じました。
また、2人で1枚のコンパネを持つことが安全にもつながります。これから働く人たちは、どんどん高齢化していきます。高齢者においても、同じようなことが言えると思います。「1人で持って」というよりも、「2人で安全を確認しながら動いてください」というほうが安全ですよね。
女性が活躍する現場は、誰もが活躍しやすい現場といえると思います。2人で1枚のコンパネを持つことが「当たり前だよね」と言ってもらえるような、中小企業で頑張っている人たちが今、実践していることが普通に広がっていってほしいなと感じます。
では、入職・定着に関して、会場の皆さんはどんなことを考えているか、質問や意見でも構いませんので、ぜひお願いします。
女性A:
広島の中小企業のリフォーム会社で総務・経理を担当しているものですが、私どもも女性に長く勤めていただきたいという思いがあり、改善を試みています。先ほど籠田先生が「VS」があったとおっしゃっていましたよね。子どもがいる人といない人、独身の人と結婚している人、バツイチの人、家族がいる人。私のように年配になってくると、親の介護がある人とない人。
結果、建設リフォームではやはり、結婚していなくて、子どもがいなくて、残業ができる人が仕事をすることになります。家庭を持っている人たちにも思いやジレンマはあって、働きたい気持ちはありますが、家族や子どもを思うとできず、いろいろな思いを抱えています。当社の場合は、コミュニケーションがとれていることで表面化はしていませんが、思いはすごくたまっていると思います。そこで、どのように「VS」を乗り越えられたのか、うかがいたいです。
籠田:
私は「日常における平等は不平等なんだ」とみんなに言っていて、ある意味、「おにばば」と呼ばれていました。本当に人によって違いがあって、これくらいで難しいと感じる人、これくらいなら簡単と思う人、いろいろあります。また、子どもがいる・いないにかかわらず、1人暮らしでも、実家でテレビが故障したら、自分が面倒を見に行かないといけないなど、本当にさまざまです。それを共有することがとても大事だと思います。
ワークライフバランス導入の最初の頃、私はお昼休みを11時半から1時半までの2時間取りました。休憩時間といっても、子どもの用事で出掛ける人などいろいろです。私が積極的にしたのは、自分自身が大変だったのもありますが、買い物に行って、お昼ご飯を作るのと一緒に、晩ご飯の支度をすることです。何人かの社員も一緒になってやりました。そうすることで、各自の食べ物の好みやご家族の食べ物のアレルギーなどがわかります。仕事以外の話をする時間をわざわざ設けることで、だんだんとダイバーシティが動き出すような感じがしました。
そして、ポイントは女性リーダーの存在だと思います。例えば、今、総務をされて全体の動きを把握してる方が、女性のリーダーとなって、女性に伝えていく。やはり女性に伝えられるのは、女性しかいません。男性もとても勉強されているし、思いやりもあります。女性のために一生懸命したいという人もいます。けれど、やっぱり女性に伝えることは、女性にしかできないんじゃないかなというのが私の考えです。いかがでしょうか。
佐藤:
私は1人で、小学校の耐震改修の工事を任せられたことがあるのですが、現場代理人であり、主任技術者という立場でしたので、常に現場にいるのが大前提でした。けれど、1人で現場をやりくりできるという利点はありましたので、作業の調整を自分なりにして、用事があるときは行けるように工夫したりしました。日常的にお昼を2時間とるとすると、職人さんたちは職人さんたちの手順でやっているので、難しいところもあるかと思いますが、仕事柄や現場の様子、人によるというのと一緒で、その場なりの工夫を重ねていくことで、お互いの理解や共有につながっていくのかなと思います。
◆建設業の魅力を十分発信できていないのは、“もったいない”
籠田:
大企業の女性活躍はここ数年で大きく変わってきている感がすごくあります。でも、大企業も大企業だけで仕事しているわけではなく、取引先、関連企業は中小企業だったりします。同じ現場の中で大企業も中小企業も一緒になって良い現場をつくっていくには、これから先、中小企業が女性活躍に向けて本腰を入れてやっていくべきと思います。イノベーションに正解はないので、何をやればうまくいくのか、答えはないと思います。少しずつ、5年、10年かけてマネジメントシステムをつくっていくことだと思います。ぜひできることからされるといいかなと思います。
女性B:
私は18歳でこの業界に入って、4人の子どもを育てながら、今40年目に入ろうとしています。なんとか無事にここまでこられましたが、最初に子ども産んだ頃は、産休を取るのも支店で私が初めて、育休を取るのも初めてでした。支店の中で女性が歩む一番手をずっとやってきましたので、ある意味ロールモデルかもしれません。現在、女性活躍が叫ばれていますので、女性活躍のリーダーをしていますが、ときどき息苦しくなります。そんなに「女性活躍」と騒がなくても、女性は活躍してますよね。昔は結婚したら辞める、出産したら辞めるという状態でしたが、今は結婚しても辞めない、出産しても辞めないというように、社会と女性は密着しているので、そこまで大声を上げて、「女性活躍」と騒ぎ立てず、優しく見守ってもらいたいなという気持ちでいます。
「管理職を○倍にしなさい」と、目標を掲げることもとても大事とは思いますが、それによって女性が「苦しめられる」「押さえつけられる」「無理やり管理職にさせられる」「仕事を増やされる」というのは、避けていきたいのです。私は女性活躍のリーダーとして、女性を守りながら、ずっと働き続けられる態勢を作れるような活動をしていきたいと思います。
それから先ほど、広島大学などの学生に説明に行かれる活動は、とてもいいことだと思いました。今は中学校に入ると、先生からすぐに「進路を決めなさい。あなたは将来何がしたいのですか?」と聞かれます。高校に入学してもすぐに「進路を決めなさい」と言われます。進路がすでに決まっている子は、女の子の場合ですと、看護師さんや学校の先生、パティシエといった夢を持っている子です。その他8割ぐらいの子は、まだ将来の希望が見えない、何をしていいか分からないという子です。そして自分の親の職場に行ったこともないから、親の仕事さえも分からないというのが現実です。ですので、どんどん中学校や高校に出向いて、生の社会、仕事の紹介をしたら、すごくいいなと思います。私は今日、そのことに一番惹かれました。是非これからもどんどんやってほしいと思いました。
籠田:
北九州市は政令指定都市ですが、高齢化が進んでいます。大学もいくつかありますが、学生は卒業すると、福岡、大阪、東京に行く割合が高いですね。ですので、市役所では、北九州市内中の高校2年生を対象に、北九州市のあらゆる産業が一堂に会する「ゆめみらいワーク」を主催しています。私の会社でも、実際にCADを書いてもらったり、大工道具を使ってもらったりする体験を行っていて、ものすごく反響がいいです。広島でも、行政の政策でそのようなことをするといいのではと思いました。
女性C:
入社2年目で、施工管理として現場工事を担当しています。私が入社したときには、すでに当たり前のように女性の活躍が推進されていました。むしろ私は選ぶ側として、「この会社は女性の活躍推進はどうなのかな」ということも判断材料にしながら就職活動をしてきました。
学生のときに建築の世界に入りたいと思い、今こうしてここにいるわけですが、実際に働いて、特に建築における設計者としての率直な感想は、仕事がきついということです。学生のときに夢見ていたのは、さきほどのCMのように、かっこよく建築にたずさわる設計者です。私は今、施工管理をしていて、仕事自体は好きなのですが、女性だからどうこうというより、単純にすごくきついんですよね。
女性と男性では、ライフイベントとして結婚があったとすると、男性はきっと「結婚して家庭を持ったから、きつくても頑張ろう」と定着すると思うのですが、女性の場合は、「辞める。もしくは内勤になるしかないかな」となるのではないかと思います。
ですので、女性に対して重点的に施策を考えていくことも重要かもしれませんが、まずは建設業界全体として見直していく必要があると思います。建設業に入職する女性は、やる気など気持ち的には男性と変わらないと思います。
籠田:
入社2年目は、確かにきついときですね。勇気を持って話をしてくださって、ありがとうございます。結婚というライフイベントがあったとき、男性は男の甲斐性といいますか、さらに頑張っていこうとします。しかし、女性は結婚すると、さらに仕事がきつくなるんですよね。そうすると、結婚なんてできませんよね。そんな苦しさが女性にはあるなと思いました。だからといって、男性が女性に「じゃあ、どうしたらいいの?」って四角四面になったり、「結婚したら子どもを優先していったらいい」というのも、私はちょっとおかしいと思います。たまには早く帰らせてあげる。けれど、その人自身が持っている夢に対して支援をしていくというのを、本当に忘れないでほしいですね。
アンケート調査でも、男性の意識と女性の意識が全く違うという結果が出ています。あえて言うならば、男性が無意識でやっていることが、女性とは全く違うということを、まず知っておいていただきたいです。とにかく無意識のもとで、業界の中で何気なく言っていること、何気なくしていることは、今までの業界では常識だったかもしれませんし、世間はそうだろうと思い込んでいるかもしれません。でも、その無意識の部分が、実はもう古いといわれるゆえんでもあるということを考えてください。その答えについては、男性の皆さんにはぜひ奥さんに聞いてもらいたいと思います。夫婦で、働き方や、建設業のこれからを話すと、奥さんはご主人のことを思っていろんなことを話してくださるかもしれません。今日は少し男性を落ち込ませてしまうお話をしているかもしれませんが、そんなこともあります。
では最後に、パネラーの皆さまには、今日の感想を一言ずつお願いします。
大之木:
実は、今日の話題の女性活躍について、私は正直考えたことがありませんでした。貴重な機会を与えていただいたと思います。ありがとうございました。
春日:
女性活躍推進という視点で、女性全員がバリバリ働かないといけないということではないと思いますが、働きたいと思っているのに働き続けられない──こういうことがなくなっていくためにはどうしたらいいか、ということを考えていかないといけないと思います。
それから、弊社でも、現場監督として育休に入って、育休明けに現場に復帰したいと考えている女性がいます。ただ小さい子どもを抱えていると、時間的にさまざまな制限が出てくることが考えられます。そういったときに「朝礼・夕礼には必ず出ないと仕事をさせない」というのが今までの現場の所長の一般的な考え方でしたが、柔軟な対応が必要になります。朝礼・夕礼に出ないかわりに、日々のコミュニケーションを密にするなどの工夫で、働き続けられないと思っていた状況でも、働き続けられるように変わっていってほしいなと思います。このような工夫で、働きたいと思っているのに働けない──女性に限らず男性にもいるかもしれません──そういった方が少なくなっていくような活動を盛り上げていきたいなと思います。
小西:
今日はパネラーというよりもむしろ受講者側で、話を聞かせていただきました。とても勉強になりました。
佐藤:
いろんな立場の、いろんな環境の方の、いろんなお話をお聞きすることができて、すごく勉強になりました。
廣田:
働くお母さんとして、少しメッセージを送りたいと思います。私は仕事と子育てに追われて、綱渡りのような毎日をずっと送ってきましたが、今になって気付いたのは、その時間は、宝もののような時間だったなということです。ぜひ皆さん、時間的な制約があるかもしれませんが、仕事を辞めずにずっと続けてほしいなと思います。仕事をしながら、子育て期間を乗り切ったということは、自分自身の自信にもつながりますし、強みにもなります。陰ながら後輩の皆さまを応援させていただきます。
籠田:
では、国土交通省の鈴木悠紀さんに最後に総括をお願いしたいと思います。
鈴木:
男性で未婚で、育児も経験してない私が総括というのも僭越ではありますが、今日、気付いたことを何点か申し上げたいと思います。まず入職についてですが、入職はイメージが特に大事だというお話が多かったかなと思います。実は、各建設企業さんの採用の際のアピールポイントを聞くと、「うちは施工能力が高い」といった感じのアピールをされる会社さんがとても多いです。しかし、学生が知りたいことは、実は施工能力よりも、現実的なことも含めて、やりがいであるとか、休日や年収などです。そういったイメージギャップを埋めていくことが大事なのかなと思います。
また今日、CMを拝見させていただきましたが、特に親御さんから見た建設業、同じ建設業というグループの中で、会社ごとに取り合いするというよりは、まずは建設業全体に人を呼び込む取り組みが必要なのだなと気付きました。
さらに定着というテーマでは、女性活躍の取り組みを進めていく必要がありますが、その言葉だけが踊らないように、例えば「女性の管理職を○割にする」というだけではなく、一つ一つの質を高めていくというのも、今後は大事になっていくのかなと思いました。その中で特に女性リーダーを設けてコミュニケーションを図ることなどが、息の長い取り組みになるとは思いますがとても大事と思いました。僭越ではございますが、まとめさせていただきました。ありがとうございました。

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