建設産業女性活躍セミナー in 大阪

建設産業女性活躍セミナー in 大阪建設産業女性活躍セミナー in 大阪

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開催日時
平成29年11月17日(金)
14:00〜14:30 基調講演①
14:30〜14:45 基調講演②
14:45〜16:00 パネルディスカッション
16:00〜17:00 名刺交換・交流会
開催場所
建設交流館
基調講演①
「建設業を女性の一生の仕事に~男女共創の幕開き」
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役 籠田淳子氏
基調講演②
「最近の建設産業政策について」
国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 建設市場整備推進官
西畑 知明氏

パネルディスカッション

テーマ
「建設産業において、さらなる女性の入職及び定着を促進するためには」
概 要
○コーディネーター

籠田 淳子氏
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役

○パネリスト

田辺 直子氏
ナレッジボックス株式会社(京都サンダー株式会社)
建設業女性未来づくりの会(CHIC)
鳥生 由起江氏
大和ハウス工業株式会社
人事部ダイバーシティ推進室 次長
低層住宅労務安全協議会 じゅうたく小町部会
畠中 千野氏
大成建設株式会社
原子力本部 原子力土木技術部 課長
(一社)日本建設業連合会
松下 文氏
株式会社竹中工務店
大阪本店設計部 プロダクト3グループ 主任
(一社)建築設備技術者協会 設備女子会
村上 育子氏
鹿島建設株式会社 工事課長代理
(一社)土木技術者女性の会
西畑 知明氏
国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課
建設市場整備推進官
川内 勝嘉氏
国土交通省 近畿地方整備局 建政部
建設産業第一課長補佐

 

パネルディスカッション

建設産業において、さらなる
女性の入職及び定着を促進するためには

 

籠田:
本日は、大阪でご活躍され、また現場でさまざまな経験をされている女性技術者・技能者と、それらを支える女性たちに集まっていただきました。現場が本当に忙しい中、時間を作っていただきましたので、言いたいことはなんでも言って帰っていただきたいと思います。あらためて一人一人に、建設業の中でどのようなお仕事をされているのか、そして業界の中で気付いた問題点や要望がありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

籠田 淳子氏 (有)ゼムケンサービス 代表取締役

籠田 淳子氏
(有)ゼムケンサービス 代表取締役

◆女性が活躍するうえで課題として感じていること〜自己紹介を兼ねて

 

田辺:
私は、8名の社員のうち女性社員が6名という、京都にある小さな会社に所属しております。お客さまも大企業より地元の中小企業が中心となっており、主に建設業のお客さまを、ソフト販売やシステムの構築といったソフト面から支える仕事をしています。そのなかでとてもよく聞くお悩みは、「若い人が入ってこない」「女性が非常に少ない」「入ってきても続かない」ということです。
私は、もともと製造業のメーカーで仕事をしていました。しかし、配偶者の転勤という自分の意思に関係のない退職を2度余儀なくしました。そのとき30代半ばでしたので、年齢のせいで面接まで進めなかったり、面接に呼ばれても「子どもは産まないのですか?」などいろいろなことを質問され、再就職にかなり苦労した経験があります。
そして、こんな思いは二度とごめんだということで、キャリアコンサルタントになりました。その後は女性の再就職の支援も仕事としているうちに、京都サンダー株式会社という会社と出会い、そして現在は、地域に密着した建設業のお客さまの悩みを聞いて、一緒に考えていくという仕事をしています。現在、建設業の女性従事者の約8割といわれています事務所の中で働く女性のスキルアップを支援するため、「建設ディレクター」という名称の職域を設けて、主に現場をソフト面から支える取り組みを進めています。

田辺 直子氏 ナレッジボックス株式会社(京都サンダー株式会社) 建設業女性未来づくりの会(CHIC)

田辺 直子氏
ナレッジボックス株式会社
(京都サンダー株式会社)
建設業女性未来づくりの会(CHIC)

鳥生:
私は、大和ハウス工業株式会社の人事部でダイバーシティ推進を担当しております。弊社の社員は大体1万5000人で、うち女性は3000人と社員の約20パーセントを占めています。そのうちの4分の1が技術者、8分の1が営業です。技術者のうちの半分以上は設計で、現場監督は113人います。現在は、多様な人材が活躍できる会社風土に変えていく仕事をしており、例えば、現場で活躍する女性の、現場とキャリアの両立支援などに取り組んでいます。
もともと私は男女雇用機会均等法の1期生で入社し、23年間ずっと技術者として、住宅やアパートの商品設計をしていました。私には子どもがいますので、そういった生活経験が商品をよくして、お客さまの満足につながるということを体感できたことで、それをどこの現場でも享受できるように努めてきました。
今、女性が仕事と家庭との両立で直面しているのは、現場の技術者として活躍し成績を残しているにも関わらず、育児休業から戻ると、男性の上司から「お子さんがいるのに現場を任せたら子どもがかわいそうだから、内部の仕事に変わったらどうだ」といわれることが本当に多くあるということです。「かわいそうというのはあなたが決めることではなく、かわいそうじゃないように、仕事をさせることがあなたの仕事です」といいたいです。
113人の女性現場監督を調べてみると、お子さんがいる方が20パーセントいます。つまり、5人に1人はお子さんがいらっしゃって、ただいまその半分が育児休業中、残り半分の方は現場を管理しています。ようやくここまでたどり着くことができたのですが、これを当たり前にしていくためにさらに頑張り続けていきたいと思います。

鳥生 由起江氏 大和ハウス工業株式会社 人事部ダイバーシティ推進室 次長 低層住宅労務安全協議会 じゅうたく小町部会

鳥生 由起江氏
大和ハウス工業株式会社
人事部ダイバーシティ推進室 次長
低層住宅労務安全協議会 じゅうたく小町部会

畠中:
私は94年に大成建設株式会社に入社し、主に山岳トンネルの設計を担当してきました。3.11の震災以来、現在の原子力本部に移り、福島の復興支援等を行っています。
先ず、私の推薦団体である日本建設業連合会の女性活躍推進の取り組みについて、紹介いたします。日本建設業連合会は、通称「日建連」といい、総合建設業の約140社が所属しています。東京に本部をおき、各地方に9支部あります。政府が進める「明るい建設業を立て直し、生産性向上と新規入職者で建設業を支えていく」という取り組みを日建連も推進しています。なかでも私が所属している「けんせつ小町委員会」は、新規入職者のうち女性を20万人に増やすことを目標に、女性が働きやすい環境を整えていこうと決意しています。
活動にあたっては、2014年に「けんせつ小町」の名前とロゴを決めました。建設業に関わる女性全員、技術者、事務の方も活躍してほしいという意味を込めた名前となっています。2015年には「けんせつ小町委員会」を設立し、今年3年目になります。技能者と技術者のどちらも女性を「5年で倍増」「10年で3倍」といった目標を掲げ、さまざまな活動を行っています。
例えば、「けんせつ小町活躍推進表彰」は、1年間にけんせつ小町として女性が活躍した事例を応募いただきき、表彰します。去年は長谷工コーポレーションの、営業からメンテナンスまで全部女性で行い、「職業に男女の差はない」ことをアピールしてくださった現場が最優秀賞となりました。
また、女性活躍を宣伝するポスターを作りました。モデルは、全員弊社の技能者の方々です。「美人なモデルさんで作ったのね」と言われましたが、10代から50代までの女性が実際に働いているところへ行って写真を撮りました。ポスターを全国に配って、女性の技能者の方々にぜひ来てくださいというPRをしています。けんせつ小町は日建連の所属以外でも使っていただいていて、「じゅうたく小町」ですとか「ドローン小町」など、ドローンの作業をする方たちの部会もあるそうです。業界全体で「けんせつ小町」として盛り上げていければいいなと活動しています。

畠中 千野氏 大成建設株式会社 原子力本部 原子力土木技術部課長 (一社)日本建設業連合会

畠中 千野氏
大成建設株式会社
原子力本部 原子力土木技術部課長
(一社)日本建設業連合会

松下:
私は、株式会社竹中工務店に入社して13年目で、結婚して2人の子どもがいます。「設備女子会」の推薦で出席させていただきました。私の仕事は設計ですが、「ゼネコンで設計をしています」と言うと、「それじゃ、デザインも設計できるんですね。やってもらおうかしら」と言われたりします。ただ、私の専門は設備設計なので、照明や空調などを適切に計画して配置するのが仕事です。
先日、近所の奥さまで、デスクワーク系の仕事のほかに、建設現場でダクト工事をしている方とお話をしていた時のことです。「建設現場でダクトをする工事はどうですか?」と感想を尋ねたら、「毎日の作業で、目に見えてできていくダクトを見るのがうれしい。
また、現場には、休憩所や台所がありますが、ちょっと汚れているなと思い、掃除をしたら、職人さんたちにすごく喜ばれて、それがうれしかった。事務系のデスクワークの仕事のストレスをダクト工事で解消しています」とおっしゃっていました。ダクトは最近、軽いものもあるので、女性ももっと現場に入ってできるはずです。しかし、一般の方には建設業というと、とび職が鉄骨に登って「カーンカーン」と作業していたり、大工が重いものを運んでいたりする姿がイメージとしてどうしてもあるようです。ただ、「設備職」という入り口から女性に入職してもらうことはできるのではないかと思います。

松下 文氏 株式会社竹中工務店 大阪本店設計部 プロダクト3グループ 主任 (一社) 建築設備技術者協会 設備女子会

松下 文氏
株式会社竹中工務店
大阪本店設計部 プロダクト3グループ 主任
(一社) 建築設備技術者協会 設備女子会

村上:
私は、土木工学科を卒業して、93年に鹿島建設株式会社に入社しました。入社後は、現場と内勤を交互に繰り返し、現場は6現場、トータルで11年。内勤は設計や入札関係の見積り、技術営業や現場支援などを行い、トータルで13年を迎えます。経験した現場は、浄水場や下水処理場の施設や自動車専用道路の高架橋などの公共工事がほとんどで、今は2017年12月に開通する新名神高速道路の現場で、インターチェンジと連絡道を作っています。私が入社した約25年前は、女性は洟(はな)も引っ掛けてもらえないような存在でした。
「村上個人には能力がないから」と言われるならまだ分かりますが、女性というだけで土俵にさえも乗せてもらえないという、私自身とても受け入れ難い状況でした。この25年間さまざまな壁にぶつかりつつも、現在に至っている状況です。
女性が活躍する上で課題となることについて、私が見聞きして感じた課題ベスト5をあげてみます。第1位は「長時間労働、夜勤」です。これは今業界が一斉に働き方改革に着手していますので、どうにか改善していけるのではと思っています。
第2位は「体力勝負の作業」。これには実はコツがあります。籠田さんの会社では男女一緒にペアを組んで仕事をされているように、私も現場に出ていたときに、一回り年下の男性とペアで仕事をしていました。彼に重たいものを全部持ってもらい、測量道具などもセットしてもらっていました。その代り、彼が不得意とする提出書類の作成などは私が担当するなど、お互いで不得意な部分を補っていました。体力勝負とはいえども女性でもこなせるやり方はいくらでもあると思います。
第3位は「会社もしくは上司のスポンサーシップの欠如」。第4位は「転勤・異動」。これは会社と上司と相談すればなんとか乗り切れるのではないかと思います。第5位は「清潔感の欠如」。現場ではトイレが汚いなどいろいろありますが、それこそ女性が入ってどんどん改善していけばいいのではないかと思います。
最大の問題は、第3位の「会社もしくは上司のスポンサーシップの欠如」です。ここでいうスポンサーシップとは、支援と育成をいいます。今、女性を採用する企業が多いのですが、支援はしても、育成が追いついていません。女性を活用していくには「育成」も重要です。男性と同様に長いスパンを掛けて、将来のなるべき姿を見据え、時には厳しくしっかりと育成していく必要があります。先ほど籠田さんから、キャリアプランを自分で考えさせるという非常にいい案を教えていただきました。私も実際そう思います。弊社の若い女性技術者には、何歳で結婚して、何歳で子どもを産んで、そして仕事では何を目指すのかを、今のうちからイメージしておきなさいとアドバイスをしています。女性はライフイベントが多く、結婚や出産が遅くなるほど、親の介護など越えていかなくてはならないものが一気に増えてきますから、今の段階から様々な事柄を知って、そしてイメージしておくことが大切だと思うからです。
また今後も現場の施工管理をしていきたいのであれば、まずは監理技術者を目指すようにと指導しています。監理技術者は1工事に付き1人しかなれず、また規模が大きい工事であれば監理技術者になる要件が厳しくなるため、その条件をクリアするためにもキャリアを積まなくてはなりません。そのようなことをしっかりと踏まえた上で、自分が将来にわたってどうキャリアメイクしていくのかを、前もって自分自身でも考えておく必要性も伝えています。
弊社では、メンター制度を取り入れています。10年次未満の女性技術社員をメンティとして位置付け、10年次以上の女性技術社員がメンターとなって、お姉さん役として、公私ともにいろいろな相談に乗ってあげることで離職率を減らそうとしています。これは「支援」に近いものですが、これも定着という意味では有効な方法の1つです。メンティが「悩んでいるのは自分ひとりだけじゃない」と思うだけでもだいぶ気が楽になり、経験豊富な先輩から気軽にいろいろなアドバイスをもらえて安心するようです。
私は土木技術者女性の会の企画広報局長を務めていることから、会の活動についても紹介させてください。当会は34年に亘って活動を続けており、2013年に一般社団法人格を取得しました。会員数は、正会員、学生会員、サポーター含めて現在約550名です。数年前までは、30代40代が多かったのですが、最近では20代30代が半分以上を占めています。身近にお手本となる先輩がいないことから、当会に所属する多様な人材にロールモデルを求め入会されています。当会は、はげましあい、知識向上、働きやすい環境づくり、社会的評価の向上、後輩へのアドバイスの5つの目標を掲げ、土木界における女性の活躍を支援しています。2014年度には、ドボジョの普及に貢献した実績が評価され、内閣府「女性のチャレンジ賞」を受賞しています。
最後に、当会は女性土木技術者のロールモデル集である冊子を発行しています。土木界で活躍している現役の土木女性技術者14名による自身の仕事の紹介、キャリアメイクのポイント、女子学生へのメッセージなどが載っています。それともう1冊。土木学会が出版した『継続は力なり』は、女子学生だけではなく、現役の女性技術者を応援する書籍で、当会は編集協力を行いました。このように、当会は、いろいろな活動により次世代の育成に力を入れています。

村上 育子氏 鹿島建設株式会社 工事課長代理 (一社)土木技術者女性の会

村上 育子氏
鹿島建設株式会社
工事課長代理
(一社)土木技術者女性の会

籠田:
現場女子のキャリアメイクの方法まで公開されているということで、とても関心を持ちました。本日はご当地の近畿地方整備局建政部建設産業第一課の川内課長補佐にも一緒にご登壇いただいていますので、地域の活動について、ご指南いただきたいと思います。
川内:
今回、この会に参加させてもらうまでは、建設業で中心となっている男性が変わらないと、なかなか業界自体が変わっていかないのではないかと思っていました。しかし、本日パネラーの皆さんのロールモデルが非常に参考になり、考えを改めています。
女性の活用ということで、少し宣伝させていただきますと、私ども近畿地方整備局発注の工事では、男女別の快適トイレを現場に設置した場合、その費用を積算上考慮しています。また、オプションになりますが、更衣室の設置についても国交省発注工事では考慮しています。
近畿地方では、株式会社KMユナイテッドという会社が女性活用として有名です。男性の社長様に話をうかがうと、「女性を活用をしているわけではなく、女性が働きやすい職場にしたら、女性のほうが伸びていったということで、男性はダメですね」とおっしゃっていました。
女性の場合は、特に出産前後、育児も含めてきついといったことがあるので、そういったライフイベントに配慮することにより、女性が伸びるような社会になればとよいと思っております。
◆女性が活躍していることを正しく伝え、好印象を与えることが大切
籠田:
今、女子高校生・女子大学生は、土木、建築に進学する率がすごく高い時代になってきました。理系女子の偏差値は、上から順に、医学部、薬学部、建設・建築となっています。要は、偏差値の高い女性が、建設業に入ってくる可能性があるのです。この中で、建設業の入職と定着、ここについて私たちが日頃気付いていることを、皆さんと共有したいと思います。まずは入職について、大和ハウスの技術者、女性の登用率がとても高いですが、どのような成功例を持って来られたのか、もう少しお話ししていただけますか?
鳥生:
弊社にはこの3、4年、毎年400人の技術者が新卒として入っています。その半分以下が設計で、設計の半数が女性であり、女性の施工担当も毎年20人ぐらい入ってきています。 ただ、特に工事志望の方には、男女かかわらず、入ってから「現場ってこんなだったの?」とイメージが違うことで、モチベーションが下がってしまったという方が見られました。そこで、工事現場のインターンシップに力を入れ、現場ではこんな仕事をするんだということを分かってもらうようにしています。そのときに、先輩社員に来てもらうのですが、女性が先輩として「こういうことをするんだよ」と話してもらうことで、女性も活躍できることを納得してもらえます。ですので、できるだけ就活中の女子学生には、3年目ぐらいの女性の先輩に自分が担当する現場のリアルを話してもらうよう、特に力を入れています。
籠田:
イメージアップするため、いいイメージを皆さんに持ってもらおうとするあまり、ポスターにきれいな女優さんを使おうとか、そういうふうになりがちですが、真実をお伝えすることがすごく大切ですよね。先ほどの「けんせつ小町」のキラキラな、しかも美人の現場ポスター、すごくいいなと思いました。少し前に国土交通省に行ったときに、「どうしてこんな女優さんみたいな人がヘルメットかぶっているの」と思ったことがあったのですが、最近すごく変わってきているなと感じています。
建設業のイメージアップについて、土木技術者女性の会がガンガン活動されて、本当に勇気付けられている女性がたくさんいると思います。そこで、建設業のイメージに関して、村上さんはどのようなことを考えられていますか。「こういうことをしたほうがいいよ」というアドバイスがあればお願いします。
村上:
私が入職した頃には、大きなものをつくりたいという思いから、土木に入ってくる人たちが多くいました。しかし、阪神大震災を境に「わが町を守るには土木が必要である」「土木によって町を守ることができる」という思いから、土木技術者を目指す女子学生が増えてきました。そして東日本大震災を機にさらに土木に入職する女性が増えてきています。
それを踏まえると、いかに建設業が自分たちの生活に密着しているかということを、もう少し、何かしらの形で伝えるべきではないかと思います。マスコミ等の影響により、どうしても悪い印象が先走って、社会資本整備は要るけど公共事業は要らないとか、公共事業は無駄というイメージ、ニュースなどから建設業は悪いことをしているというイメージが定着しています。それに慣れてしまって業界もどちらかというと内向きですよね。ですので、一般の方を対象とした講演会などでは、「みなさんが水道の蛇口をひねると当たり前に水が出るでしょ、これは社会資本整備、公共事業がしっかりと整備されているおかげで、安全に水が供給されるんですよ。最近はトイレも水洗が普通になっているでしょ。これも下水道がしっかり整備されているからなんですよ」と身近なものを例に挙げて話をしています。こういうことを地道に伝え広めていくことが肝心だと思っています。
特に建設業に人を増やすうえで、一番のハードルはお母さんと学校の先生です。よって、もっと学校に出向いて、防災の観点から入り込むなど、子どもたちに教育をしていく必要があると思います。学校の先生の指導は大変重要で、子どものときにイメージが定着すると大学へ行ってもなかなかぬぐうことはできません。またママさん技術者のみなさんには、PTA活動を通して学校と連携するなど、もっとイメージアップを図るという草の根活動をしていただきたいですね。そうしない限りは、入職率のアップは難しいのではないかなと思っています。
籠田:
なるほど。イメージを誰にどのように伝えるか、すごく大事ですよね。2016年の熊本の震災のときにすごく思ったことがあります。私は災害応急危険度を判定するため、何日間か、仲間の建築士と一緒にボランティア活動に行きました。同時に私は関東の大学院に通っていますので、飛行機に乗るのですが、国土交通省と書かれた作業着を着た方々がびっくりするぐらい、次から次と電車を乗り継ぎ、飛行機に乗っているのを実際に見ました。ニュースでは自衛隊がすごく復旧活動をしているように見えますが、実は国土交通省やわれわれ建設業が災害の復興に関して、本当に頑張っています。こういうことも、国民に公開してもいい話ではないかと思います。「おらが町を守る──私も、僕も、自分たちの生まれ故郷を守っていく」というのは、子どもたちみんなが思っていいことです。建設業の業界紙には、女性活躍の話題が出ていますが、もっと建設業じゃない人にも届くようなことを考えていくことが、建設業のイメージを正しく伝えるということで、ひとつのポイントかなと思います。それが入職にもつながると思います。
次に、定着に関してお聞きしたいことがあります。いろいろなアンケートを取ると、定着については、「結婚」よりも、「妊娠・出産・子育て」のときに本当に女性は苦しむんです。子どもは女性だけではつくれないにもかかわらず、「子どもがいるお母さんにそんなことまでさせてかわいそう」というのが世の中です。これからの若い人たちへのエールとしたいので、子育て期に畠中さんが取り組んだことをぜひお話し願います。
◆女性が活躍していることを正しく伝え、好印象を与えることが大切
畠中:
私が入社したのは、約20年前で、「女というだけでまったく土俵にも乗せてもらえない」「必死に会社にしがみついていないと、休んだほうが負け」という感じの、「男になれ」というような時代でした。東京は、親戚も誰もいないところでの共働きでした。
当社は多くの人が働く会社ですが、子どもを産んで、土木の本社に復帰したのは私が第1号という時代でした。保育園のときは24時間預けている状態でしたが、小学校になると、お昼の1時、2時には学校が終わります。私が夜遅く11時頃の帰宅になるときには預ける先がなく、「どうしよう。仕事は続けられないのかな」と思いました。主人も同じ土木技術者ですが、相談したところ、「なんとかなるんじゃない? 子どもは生きていけるよ」と楽観的で「家にいれば大丈夫だよ」という感じでした。でも私は「子供だけで夜遅くまで大丈夫かな…」と不安がありました。
その頃、地域には遅くまであずかってくれる学童がありませんでした。そこで小学校の近くに場所を借りて、小学校から送ってくれるように先生に交渉するなど頑張っていたところ、何人かの働いているお母さんたちも一緒にやろうと手伝ってくれました。お金はかけられないので、近くの教育学部の学生さんにボランティアを募りました。学生さんには「あなたたち、学校を卒業して先生になるんだったら、こういう経験をしたほうがいいわよ。勉強になるわよ」とお願いしました。私と学生がウィンウィンの関係をつくったということです。今では小学校の横に、立派な学童ができています。あの頃は、子どもたちをあずけることに必死でした。今何かをやれと言われたら、無理かもと言いそうな気持ちですが、当時はもう生きていくというか、会社にしがみつくのが必死だったんだなと思います。
籠田:
すごい話ですよね。本当に母は強し。お父さんは「なんとかなるんじゃない?」というだけ。確実にしてみせるのが、母の力ということでね。こういう事例をみても、皆さん一人一人違った境遇の中で、仕事は続けていきたいと心の中で思っているわけです。それに対して、会社が、そして地域がどう関わることができるのかなと思います。畠中さんの例は本当にいい事例だなと思います。
松下:
どうしたら続けられるかという答えは、設備女子会のアンケートで統計的にまとめています。実際にあった話になりますが、少し下の後輩の女の子は、入ったときからすごくやる気も能力もあったのですが、大きなプロジェクトのコンペ対応や、なんらかのサポート業務的なことばかりで、独身時代にちょうどいいプロジェクトを1人で完全に通してやり切るという経験ができませんでした。育休から復帰したタイミングで、ようやくそれなりの規模のプロジェクトの担当者になったのですが、育児中という時間制限がある中で、仕事がうまく回せず、めいっぱい頑張っていたのにできないという状態でした。それによっていろんなところから非難も受けるし、本人自身も能力はあるのにできないということですごくジレンマに陥って辞めてしまったということがありました。私はありがたいことに、独身時代にひととおりのプロジェクトをいくつか担当させてもらえていたので、育休復帰した後も、プロジェクトをやる場合には、これだけの手順があって、これだけの所要量が必要、ここはなんだったらやらなくてもいいところだな、というのが分かっていたので問題なく回すことができました。
ですので、スポンサーシップやキャリアプランをきちんとつくるというのもありますが、それもなかなか現実的には難しい。「独身時代に経験を」といっても、入社1年目で妊娠する人もいる中で、いかに上司とコミュニケーションをうまく取って、キャリアプランの話をするかは、すごく難しいのかなと思います。本当に女性は多様です。

建設産業女性活躍セミナー in 大阪

 

弊社では、育休中にも少しでも業務にたずさわっていたほうがいいんじゃないかというので、テレワークをもっとうまく使っていこうとしています。アンケートを取ると、「育休中は育児に専念したいです」という人もいれば、「もうすでに産んでからしばらくたっているし、子どもがハイハイしているので、今は無理です。でも産んだ直後だったらできました」という人もいたりします。
育児休暇復帰後、限られた時間の中で全てをこなすゼネラリストを目指すのは無理でも、「ここだけは負けない」という専門性、私も実はそれで救われました。私の場合は、BIM、コンピュテーショナルデザイン、環境シミュレーションという部分で、そこだけは他の人に負けないようにしようと、すごく小さな専門性を伸ばした結果、定時に帰っても、その部分に関しては、ものすごく頼っていただけるようになりました。自分のモチベーションも上げていけますし、専門性を強化するのもひとつの解決策かと思います。
籠田:
なるほど。ゼネラリスト、できたらかっこいいと思いますが、やっぱりスペシャリストになっていくのが、すごく大切ですよね。わが社の社員を見ていても、自信を持てるようにしていくことがとても大切なことだと感じています。施工図でも「あんたが書いた施工図は分かりやすい」「あんたが書いた施工図で墨出ししたい」と言われたら、本当にやりがいを感じ、定着していくんですよね。なんとなく中途半端で、なんとなく自分の仕事がどうなのかなと思っていたら、ちょっとしたことをきっかけに「やっぱり難しい」と辞めていく。ですので、早くどこか少しでいいので、スペシャリストに育っていくキャリアプランをつくってあげることがとても大切かなと思います。
会場から、定着と入職の件で意見や感想、質問がございましたら、ぜひお話をお聞きしたいと思います。
女性:
私は、今40歳でコンサルタント会社に勤めています。子どもが6歳と2歳で大変な時期ですが、皆さんのお話を聞いて励まされました。資格のことになりますが、技術士という資格を目指していまして、試験会場へ行ったときにすごく思ったことがあります。ほとんどが男性で、トイレに行くと分かりますが、男性はすごく列をつくっているのに、女性は7人ぐらいしかいなくて(笑)。こんな業界なんだと思って、圧倒されました。頑張るしかないのですが、子どもも小さい中で、「どうやって…」とも思います。皆さんも踏ん張らなきゃいけないときがあったと聞いて、感動というか、支えになりました。
籠田:
今が一番苦しいときですね。私が子どもを育てるときも、小学校に上がる前後は本当に大変でした。まず資格を取られるということは素晴らしいと思いますし、資格が自分を支えてくれるときが必ず来ます。ぜひ諦めずに資格を取っていただきたいと思います。そして、今年よりも来年、来年よりも再来年、本当に周りが変わってきますし、子どもも成長してきます。子どもの成長は、親の成長と一緒なので、母親が元気で生き生きして仕事に前向きだったら、子どもは絶対によい成長をしてくれます。
村上:
コンサルに勤める会員の方の話を聞くと、いろいろな職種と比べ、コンサルは男女差が少ない仕事のようです。そして資格が利いてくることからも、がんばって資格を取ることをお奨めします。また中には、一度離職された方もいらっしゃいますが、個別に会社と契約して在宅で仕事をしたり、子どもの手が離れてから会社に復帰したり、また経歴を基に違う会社へ転職された方もいらっしゃることから、コンサル業界は少し特殊かもしれませんが、いろいろな道が選べる方法があるので、余裕ができた時点でリサーチされてもいいかもしれません。
籠田:
私も女子トイレに女性が全然いない試験会場は、何回も経験があります。でも、全国をまわっていると、本当にたくさんの女性がいらっしゃるんだってわかってものすごく励みになります。ぜひ皆さん、つながっていただいて、みんなで支え合っていきたいなと思います。
田辺:
これまで、主にキャリアコンサルタントとして女性の再就職支援、そして若者の就職支援を行ってきました。また、今は小学校からすでにキャリア事業が行われており、出前講座という形で学校に出向き、「例えばこういう業界があるよ」と建設業を紹介しています。でも女子の場合、中学生から高校生くらいになると、「建設業で女の人が働く場所があるの?」という質問が100パーセント返ってきます。ただ工業高校などに行きますと、全くガラリと変わり、高校生ながらに建設業に女性の働く場所があるとしっかりと認識している子が多くいます。さらに、一生の仕事にしたいと漠然と夢を描いている子もいるのですが、一番のネックは母親です。「女の子なのにそんな業界はやめておきなさい。わざわざしんどい思いをしなくていい」というお母さんの壁が大きいのです。
キャリアデザインについては、京都府建設業協会の新人研修やフォローアップ研修を行う際には、その場で必ずキャリアプランシートの作成をしてもらいます。自分でこの時期にはこれをやりたいということが分かると、それに向かって多少辛いことがあっても頑張れるからです。そこでくじけたら、もう終わってしまうという、踏ん張りがきくきっかけにもなります。比較的年齢の若い女性の方へのキャリアプランシートについては、やはり女性ですので、途中でライフイベントがさまざまに起こってきます。必ずしもプランどおりにいかないことも多々ありますが、「では、うまくいかなかったときにどうするか」という案を自分の知識として持っておくと、そうなったときに、自分1人で閉じこもることがなくなると、私自身の経験からも思います。
また定着という面でも、先輩や上司とコミュニケーションを取るツールの一つとして、キャリアプランシートを活用していただきたいと思います。自分1人で完成させても自己満足にすぎません。やはり経験者から聞く話は非常に重いですし、なおかつ現実味が全然違います。ですので、先輩や上司とコミュニケーションを取ることで、かなりの自分の今後を落とし込めますし、先輩や上司と話すきっかけにもなります。建設業では先輩とコミュニケーションがなかなか取れないことが多くあります。雑談することも大事ですが、キャリアプランシートを通して、「一緒に考えよう。それをしゃべるきっかけにしてもらおう」と、若い方たちにおすすめしています。コミュニケーションが活発になって、建設業を一生の仕事にしていこうという若い方が増えたら、自然とかっこいい先輩の姿を見て、女性の皆さんの入職者も増えると思います。その第一歩につながるよう希望を込めて、日々私もいろいろなところで、キャリアプランシートを進めているところです。
籠田:
今、女性技術者・技能者は10万人といわれている中で、国交省は5年で倍にしようというアクションプランを打ち出しています。で、私が今思ったことですが、1人の女性技術者・技能者が、1人の女性技術者・技能者の育成をしようとキャンペーンをしたら、簡単に倍になるんじゃないか、と。やっぱり女性は女性の言葉が一番響きますし、一番キャッチボールが正しく伝わる気がするんですね。今、頑張られている方も、ぜひ若い方に一緒に頑張ろうとどんどん声を掛けていただくと、また頑張れるかなと思いました。
最後にパネリストの皆さんに一人一言ずつ、これからの未来をつなぐ若い女性技術者・技能者へのメッセージをお願いしたいと思います。
◆建設業で働く女性、将来を担う女性へのメッセージ
田辺:
建設業はよく女性が少ないと、大体男性と女性の割合が8対2ぐらいだと言われています。おもてに出てくる情報は、どちらかというと嘆かわしい情報が非常に多いように感じますが、逆に考えると、非常に女性が活躍する余地がまだある、伸びしろがたくさんある業界ということだと思います。いろいろな職種も活用できますし、女性の活躍できる職種がまだまだある、非常に未来を持った業界といえると感じています。ですので、今日お会いした方々、本当にかっこいい方ばかりですので、建設業に女性がかっこよく活躍できる場所がたくさんあると、ぜひ私も一緒にPRして広めていきたいと思います。
鳥生:
男性を含む企業のマネジメントをされている方々へのメッセージになりますが、女性が活躍すると、企業にとってもいいし、お客さまにとっても事業にとってもよくなるので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。ただ、「女性だからこうしないといけない」「女性だからこれを任せる」ということではなく、実際に配属したら、その人の個性や状況に合わせて、最適な環境づくりや仕事の割り当てをやっていただければ、結果的によくなると思います。ぜひそのような一人一人を見て個性を伸ばすという取り組みをお願いしたいです。
畠中:
人生は一度しかないので、何事も経験です。子育て、プライベート、仕事も、経験したことに無駄はありません。人生において、自分はやじろべえだと思って、仕事に重きを置くときもあれば、子育て、主婦、プライベートに重きを置くこともある。バランスよく崩れなければそれでいいと思います。そのように建設業の中で自由に泳いでいければいいなと思っています。
松下:
先ほどの資格試験会場の話は、私も同じ思いを抱えたことがあります。一級建築士の会場は意外と女性もいますが、建築設備士の会場は、女性は私1人でした。でも、某女性比率の高い業界の友達の話を聞くと、けっこう女性同士のひどいことがいろいろあると聞きます。ですので、隣の芝生は青くみえるといいますが、実は青くなかったということもあります。男性が多いこの業界はみんなが本当に優しいので、男女比率が同じぐらいを目指すのがいいのかなと思います。自然な形で女性が増えていく活動に少しでも協力できればと思います。
村上:
現場で働く私に、以前の上司が「個々でみれば、男性の中にも仕事によっては得手・不得手、向いている・向いていないがあるわけで、性別でいえば、あなたがたまたま女性だったというだけのこと。性別はたいした問題ではない」と言ってくれていました。ですので、男性のみなさんには「女性だから活躍させなければいけない」、「女性だから云々」と気負うのではなくて、男性にもいろいろなタイプがいるように、その延長線上に女性がいるというぐらいの気持ちで、あまり身構えず、そして個々の特性を活かすような職場づくりをお願いしたいと思います。
もう1点は、育児と仕事の両立は、実は男性の問題でもあります。女性の問題とは限りません。育児と仕事の両立は、介護と仕事の両立にも結びつくことから、「育児と仕事の両立が大変ですね」と言われるのが女性だけでなく、男性にも言われるように、ぜひイクメンを増やしていただきたいですね。そのためには、経営者層の考える方向を少し変えていただくだけで、女性の活躍する場がもっと広がるのではないかと期待しています。
西畑:
本日はどうもありがとうございました。このセミナーは今日で5回目になりますが、毎回パネルディスカッションではあっという間に時間が過ぎ去っていきます。本当に皆さん、バイタリティーにあふれていらっしゃるのですが、その裏ではいろいろな気苦労、苦労をされていて、それでも乗り越えていらっしゃるからこそ、お話にもすごく説得力があるのだろうと思います。ぜひこういった機会を利用して、建設業の中で、女性がこれだけ生き生きと働いていらっしゃるということを、私どもも積極的に効果的にアピールしていけたらと思います。本日は、長時間にわたり、ありがとうございました。

建設産業女性活躍セミナー in 大阪


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