建設産業女性活躍セミナー in 札幌

建設産業女性活躍セミナー in 札幌建設産業女性活躍セミナー in 札幌

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開催日時
平成29年12月13日(水)
14:00〜14:30 基調講演①
14:30〜14:45 基調講演②
14:45〜16:00 パネルディスカッション
16:00〜17:00 名刺交換・交流会
開催場所
北海道建設会館
基調講演①
「建設業を女性の一生の仕事に~男女共創の幕開き」
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役 籠田淳子氏
基調講演②
「最近の建設産業政策について」
国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 主査
渡邊 広樹氏

パネルディスカッション

テーマ
「建設産業において、さらなる女性の入職及び定着を促進するためには」
概 要
○コーディネーター

籠田 淳子氏
有限会社ゼムケンサービス 代表取締役

○パネリスト

田原 さゆり氏
日本データサービス株式会社 環境技術部 次長
(一社)土木技術者女性の会
土山 淳子氏
鹿島建設株式会社 北海道支店 管理部長
(一社)日本建設業連合会
飛田 史枝氏
勇建設株式会社 工事部工事課
(一社)北海道建設業協会
山崎 裕子氏
株式会社ビーゴーイング 設計部 係長
(一社)建築設備技術者協会 設備女子会
渡邊 広樹氏
国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課
主査
斉藤 洋一氏
国土交通省 北海道開発局 事業振興部 建設産業課
課長補佐

 

パネルディスカッション

建設産業において、さらなる
女性の入職及び定着を促進するためには

 

籠田:
皆さん、こんにちは。本日は、建設産業においてさらなる女性の入職および定着を促進するために、現場の最前線でご活躍されている、たくさんの北海道出身者やご縁のある女性に登壇していただいています。忌憚のない生の声を共有して、女性や若い方がもっと働きやすい環境整備に向け、この業界の常識を覆すような風穴を開けていきたいと思います。
それではさっそくですが、自己紹介とあわせて女性活躍推進に関して、今お考えになっている業界の課題、現場で困っている点など、お聞かせいただきたいと思います。

籠田 淳子氏 (有)ゼムケンサービス 代表取締役

籠田 淳子氏
(有)ゼムケンサービス 代表取締役

◆女性が活躍するうえで課題として感じていること〜自己紹介を兼ねて

 

田原:
私は札幌市の出身で、地元の高校・大学を卒業した後に、東京都にある(一財)日本食品分析センターに入所しました。実は私は土木屋ではないのです。ここで社会人生活をスタートさせ、2年3カ月で第一子出産を理由に辞めました。その後、札幌に戻り、1989年に環境系のコンサルタント会社に入社。そこで第二子を出産し、産後8週間で職場復帰しました。1994年に建設コンサルタント会社に転職し、上の子が8歳、下の子が3歳のときにシングルマザーになりました。その後も職場を転々とし、4年前から現在の日本データサービス(株)に勤務し、環境測定分析部門の管理業務と自然環境保全分野の実務を担当しています。
日本データサービス(株)では、会社設立の翌年に就業規則を作成し、約40年を経て、ようやく育児、介護休業等に関する規則を定めました。そして今年新たに、社内労働基準および働き方改革推進委員会というものを設置して、世の中の流れに合わせ、社内の働き方を改革しようと動きだしました。弊社には、現在、非正規雇用を含めた総従業員数が220名います。そのうち、技術系、事務系含めて女性が全部で60名ほどです。これまで育児休業の実績は6名、特例として在宅勤務や時短勤務の人もわずかながらいます。また管理職は全体で76名いますが、そのうち女性管理職は8名です。
私は、女性の活躍推進には4つの課題があると考えています。1つめは、現在の日本では、やはり男性に比べて女性のほうが、結婚・出産・子育て・介護など、ライフイベントの変化に応じた働き方が求められているということ。2つめは、体力や腕力、脚力など、身体能力の男女差はどうにもならないということ。3つめは、北海道の現状かもしれませんが、「このまま仕事を続けていけるだろうか」あるいは「昇格して管理職になって、自分は本当に務まるだろうか」と不安に思ったときに、特に中小企業は、職場内にその見本となるような人、あるいは相談相手となるような先輩がいないということ。最後の4つめは、よく聞かれる話ですが、これまで男性中心だった職場に女性が入ってくると、同僚も上司も女性職員でさえも、どう扱っていいか分からないということです。
次に、私を推薦してくれました「土木技術者女性の会」を紹介します。当会は1983年に任意団体として発足しました。この前年に、土木学会誌の特別企画で、当時はまだ非常に珍しかった女性の土木技術者5名による座談会が開催されて、そこで巡り合ったことが、当会を発足したきっかけと聞いています。2013年には一般社団法人格を取得しました。全国組織である当会は4支部に分かれ、現場見学会、勉強会、女子学生を対象としたキャリアセミナー等を開催しています。
活動目標は、当初からずっと変わらず、「土木界で働く女性技術者同士の励まし合い」「知識向上」「女性にとって魅力のある働きやすい土木界の環境づくり」「女性土木技術者の社会的評価の向上」「土木技術者を目指す女性へのアドバイス」の5つです。現在の会員数は約550名で、籠田さんも受賞された内閣府女性チャレンジ賞を会として受賞しています。
最後に、ドボジョのロールモデル集として当会が発行した『Civil Engineerへの扉』という冊子を紹介します。これまで1999年、2006年と2回発行していて、約10年ぶりに今年度刷新しました。14名の会員が、自分の仕事への情熱や、家庭との両立についてなど語っています。
もう1冊は、土木学会が出版し当会が編集協力した『継続は力なり』です。現役の女性技術者や、土木技術者を目指す女子学生、そして彼女たちを支援する周囲の方々に向けた本です。問題解決の参考となる数多くの事例や、背中を押してくれるメッセージなどがたくさん詰まっています。女性だけでなく、ドボジョの周囲にいらっしゃる男性の方が読んでも、大変参考になると思います。
このように、当会では次世代の育成にも力を入れています。何かお困りのことがありましたら、一度当会にご相談ください。建設業における女性のキャリア形成に役立てていただければ幸いです。

田原 さゆり氏 日本データサビス株式会社 環境技術部 次長 (一社)土木技術者女性の会

田原 さゆり氏
日本データサビス株式会社
環境技術部 次長
(一社)土木技術者女性の会

土山:
私は、「けんせつ小町委員会」の元専門部会長をしていましたので、今日はそのご縁で登壇させていただきました。経歴ですが、新卒で鹿島建設(株)に入社し、事務系社員として勤務を始め、総務、人事系を担当してきました。私の時代には、女性は結婚したら辞めるものと言われていて、入社したときに総務部長から「3年は勤めてくれ」と言われて、ぎょっとしたのを覚えています。「じゃあ、私は5年頑張ろう」と思ったのですが、結局、定年まで勤め続けることになっています。2000年にはじめて役職がつき、管理職になりました。そして同年人事部に異動、2007年には北海道支店にて総務グループ長に抜擢され、北海道に戻ってきました。ここで7年総務グループ長を経験しました。総務グループ長になって2年目の2009年に、全社の女性活躍推進をやってもらいたいとの打診があり、前代未聞でしたが、北海道支店と東京本社の兼務で、東京と札幌を行き来する日々が5年間続きました。
2014年には再び東京で勤務することとなり、北海道を離れ、女性活躍推進を中心に取り組む日々となりました。後輩の女性たちの活躍を推進することが最後のご恩返しだと決めていました。ところが「女性活躍を自分が現実にしろ」ということだと思うのですが、昨年、北海道支店の管理部長になりました。
現在は北海道支店で、全道の現場を含む事務系のトップとして、総務、人事、法務、広報、IT、支店の会計損益管理や現場会計、さまざまなコンプライアンスやリスク管理を含む幅広い業務の責任者として勤務しています。部下は、派遣社員を含め、男女合わせて100名程度になろうかと思います。管理職は全員男性で、先輩の男性もいる中で、管理部長をやっています。支店の管理部自体には女性が多く、男性の約2倍、女性がいます。ただし総合職の女性は私を含め2名という状況で、女性社員のほとんどが一般職です。
ここで、日建連の取り組みについてご紹介します。建設業界は、入職者が減り、高齢化が進んでいることから、今後10年で就業者数が128万人減少すると見込まれています。そこで、生産性向上もありますが、新規入職者──34歳以下の若者を中心に90万人を増やそうと取り組みを始めました。この90万人のうち20万人以上を女性にしようということがきっかけで、日建連としても女性活躍の取り組みを始めました。2014年に、女性技術者・技能者を5年以内に倍増しようというアクションプランを策定し、同年8月には、国交省と建設業5団体の連名で、もっと女性が活躍できるよう、建設業行動計画を10項目挙げ、取り組みを開始しました。「トイレや更衣室の整備」「女性の働きやすい職場をハード面で整備する」「長時間労働の縮減」「仕事と家庭の両立のための制度を積極的に導入していく」というような具体的な10項目です。私も草案段階で、少し関わらせていただきました。同時に、日建連としては、さらに女性管理職を倍増していこうと決め、現場の環境改善のためのマニュアルである「現場環境整備マニュアル」を策定しました。
そして、2015年4月に「けんせつ小町委員会」を設立しました。このとき、けんせつ小町委員会は、40名の委員のうち15名が女性という、日建連に31ある委員会の中でも女性が多い構成で発足しました。また、このとき2つの専門部会を作りました。女性技能者の活躍推進をする専門部会と、女性技術者の活躍を推進する専門部会です。このうち、私は女性技術者の活躍を推進する専門部会の専門部会長として携わりました。具体的には、現場環境マニュアルや、マニュアルを定着させるためのチェックリストの作成、小学生を対象にした現場見学会、けんせつ小町のホームページの見直し、グッズや女性が働いていることをPRするための看板の作成、ポスターによるPR、けんせつ小町の推進表彰など、さまざまな取り組みをしてまいりました。現場見学会は、大学生に働きかけてももう遅いということで、とにかく早めに小学生のうちから、お母さんをターゲットにしつつ、開催しています。
また、女性をどのように扱ったらいいか分からない男性上司が多いということで、女性にも支持される、できる上司になろうというテーマの男性上司向けセミナーや研修会、女性社員向けの研修会も開催しています。年に1回、女性活躍推進フォーラムを行い、全国を回っておりまして、今年は福岡で開催されました。あと、ホームページでは、日建連の会員企業のさまざまな制度を見られるページもありますので、「日建連 けんせつ小町」で検索していただき、ぜひご覧いただければと思います。

土山 淳子氏 鹿島建設株式会社 北海道支店 管理部長 (一社)日本建設業連合会

土山 淳子氏
鹿島建設株式会社
北海道支店 管理部長
(一社)日本建設業連合会

飛田:
私は旧穂別町、現在のむかわ町の出身で、2016年の9月に勇建設(株)に入社しました。それまで建設業の仕事はしていたのですが、子どもを出産したときに一度辞め、その後、子どもを保育所に預けながら建設業に関わる事務などをしてきました。たまたま縁があって、勇建設(株)から現場の施工管理をしないかと声をかけていただき、今の工事部工事課に所属することになりました。
建設業への入職のきっかけですが、橋の現場でアルバイトをする機会があり、そこではじめて建設業の仕事に携わりました。最初は社会勉強のためという、本当に軽い気持ちではじめたのですが、日々の小さな作業でこんなに大きな構造物が出来るのかと感動し、職人の方々がプライドを持って働く姿にも心を打たれました。それまで私の中では、建設業イコール「星一徹」(お若い方はご存じないと思いますが)のようなイメージで、気難しい人が大声を上げて怒鳴っているような…正直あまり好印象ではない世界だったのですが、そのイメージが一気に崩れ去り、私もこの世界で仕事がしたいと思いました。
現在、中3、中2の男の子、小4の女の子の3人の子どもを育てています。今は現場勤務なので、朝早く家を出て、帰りも遅くなることがありますが、会社にいろいろと配慮していただいています。子どものことで学校に行かなければならないときなど、あらかじめお願いしておくと調整してくださいます。その点は、働く上で大変ありがたい環境にいるなと思っています。言い訳になりますが、勤務時間が朝早く夜遅いので、家事を完璧にこなすのは厳しく、当番表を作って、子どもたちと分担して乗り切っています。
私自身は好きな仕事をしているので、「大変なこともあるけど楽しいよ」となるべく子どもに伝えるようにしています。ある日のエピソードですが、現場で大雨が降り、合羽を着る前にずぶ濡れになったことがありました。仕事が終わり、疲れ果てた姿で家に戻り玄関で靴を脱いでいたら、階段を降りてきた長男に「びっくりした。落ち武者かと思ったよ」と言われました。鏡を見ると、確かにどこからか逃げてきたような髪をして、悲壮感いっぱいでした。けれど、常日頃から「大変なこともあるけど、楽しいよ」と伝えているので、そのときもみんなで大笑いして終わりました。子どもたちにも、いつかそれぞれ自分の好きな道を見つけて、自分の能力を生かすような仕事をしてほしいと思っています。
入社してから行った現場としては、2016年9月から2017年3月まで、新千歳空港1号沢函渠外耐震補強工事の現場に行っていました。この現場ではポストヘッドバー工法という工法が採用されていたこともあり、私ははじめてで何も分からない状態でしたが、協力業者の方々も親切にいろいろ教えてくださり、大変勉強になった現場でした。2017年10月からは、国道275号線の江別市篠津の篠津改良工事の現場に行っています。
女性活躍推進に関する課題についてですが、普段、現場にいますので、全てを理解しているわけではありません。ただ、弊社には、私の他に女性が8名おり、現場勤務は私だけですが、皆さん、長くお勤めしている方ばかりで、非常に優秀です。着実に自分のキャリアを積んでいく働き方をしていますし、それを気負うことなく、自分らしく仕事を続けていて、素敵だなと思います。これこそが女性活躍の時代の働き方だと見ています。しかし今の時代でも「女性なのだから当然こうだろう、こうあるべきだろう」という、昔ながらの考え方が相変わらず残っていて、なかなか弊社の様な働き方が出来なくて、働きづらいと思っている女性もいるという話を聞いたことがあります。男女の差もそうですが、みんな生まれ育った時代・環境も違うので、コミュニケーションを取りながらお互いを理解しようとする気持ちを持って、溝を埋めていくことが大切だと思います。業界をあげて、女性がどんどん社会に出て活躍を…という方針・制度を打ち出しながら、一方で、それが形ばかりのものにならないように気を配っていく必要があると思います。

飛田 史枝氏 勇建設株式会社 工事部工事課 (一社)北海道建設業協会

飛田 史枝氏
勇建設株式会社 工事部工事課
(一社)北海道建設業協会

山崎:
本日は、(一社)建築設備技術者協会の設備女子会の推薦により出席させていただきました。
設備女子会は2012年に設立しました。会員としては、公官庁、ゼネコン、設備設計事務所、工事業、メーカー、学生など、設備関係に従事されている方を中心に、現在、全国で600名ほどが参加しています。北海道支部は、2016年11月に発足しました。第1回の総会には、本部から徳弘会長にお越しいただき、ごあいさついただきました。今年度の活動としては、(一社)北海道空調衛生工事業協会が8月に主催した高校生のインターンシップ事前講義に参加したり、10月には札幌創世1・1・1区北1西1地区市街地再開発現場の現場見学会を実施しました。来年度も、会員からの要望の多い勉強会や現場見学会を企画する予定です。
設備女子会では、設備女子の働き方に関するアンケート結果をとりまとめています。女性が活躍できる環境については、「仕事と家庭の両立に不安を感じている」「社内にロールモデルがいない」と半数以上の方が回答しています。私も産休を2度いただいていて、小学3年生と年長の男の子がいますので、同じような悩みを持って設備女子会に入会しました。今は交流会を通して情報の共有や交換ができることが励みになっています。中小企業の方が割と多く、社内に相談相手がいないという話をよく聞きます。このようなネットワークを活用していただくことで、社内だけではなく、縦と横のつながりを持って働くことができればいいなと思います。

山崎 裕子氏 株式会社ビーゴーイング 設計部 係長 (一社)建築設備技術者協会 設備女子会

山崎 裕子氏
株式会社ビーゴーイング 設計部 係長
(一社)建築設備技術者協会 設備女子会

籠田:
ありがとうございました。行政から、北海道開発局事業振興部建設産業課課長補佐である斉藤さんに、ご当地の女性活躍関連のトピックスをお話いただきたいと思います。
斉藤:
北海道開発局事業振興部建設産業課では、建設業や建設関連業等に関する業務を行っており、私はこのうち建設業関係を担当して建設業の振興に関すること等を行っています。
北海道の女性活躍に関する取り組み事例を4点ほどご紹介させていただきます。
まず札幌開発建設部の取り組みです。札幌開発建設部では、官民の土木のあらゆる分野で活躍している女性技術者が集まり、知見や視野を広げるとともに、職場や家庭における女性ならではの悩みなどを気軽に情報交換できる場として、土木技術者女性の会北海道支部と当局の女性技術職員により「土木なでしこの集い」という取り組みを行っています。
平成27年度に工事現場見学会を行い、昨年度と本年度は、工事現場見学会の他に交流会も併せて開催しています。出席者は、昨年度約30名、今年度は約20名でした。この他、札幌開発建設部では、将来土木技術者として働く姿をイメージしていただくため、本年1月に土木技術を学ぶ北海道科学大学の女子学生5名と当局女性技術職員とでランチミーティングを行いました。
それから、帯広開発建設部では、地域の産官学が連携し、管内の高校生に対して建設産業の現状を説明し、次世代の担い手として活躍してもらうことを目的とする「十勝建設産業の未来を考える会」の活動に加わっています。この会では平成27年に女性部会を設置し、建設産業における女性の働きやすい環境づくり、担い手確保活動にあたっておりまして、この部会に当局の女性技術職員も参加しています。本年度は帯広農業高校、帯広工業高校の生徒を対象として4月に開催された就活前三者説明会と12月に開催された建設産業説明会に女性部会のブースを設けて、女子生徒に建設業の魅力を伝えたところです。
稚内開発建設部では、建設現場において、女性が働きやすい環境を整えるには、女性目線による現場の検証が必要不可欠との観点から、本年8月に稚内港湾事務所工事安全連絡協議会の主催により、当局や受注企業の女性職員により構成された女性パトロールチームを結成し、いわゆる3K──きつい、汚い、危険がないか、工事現場のチェックを行い、女性が輝く建設現場の実現に向けた課題等について議論したところです。
なお、開発局では国土交通省の施策として、昨年10月から建設現場において、男女ともに快適に使用できる仮設トイレを「快適トイレ」として、原則、直轄工事で設置するよう経費補助を実施しています。また、女性技術者の配置を競争参加資格の要件とするなどにより、女性技術者の登用を促すためのモデル工事を実施しているほか、ワークライフバランスに取り組む企業の評価点を加点する工事を発注しています。
以上、事例をご紹介しましたが、今後も引き続き創意工夫しながら、さまざまな形で建設産業の女性活躍を支援してまいります。
籠田:
4つの事例をご紹介いただきました。私も全国10都市を回っていますが、各地方整備局が本当に創意工夫して、意識的に女性活躍に取り組んでいると感じています。小石どころではなく、大きな石をどんどん投げながら、建設業界を変えようとしてくださっているなと思っています。
今、全国で、建築・土木・設備を学んでみたいと思っている女性が、工業高校をはじめ、大学にどんどん進学しています。今までとはちょっと違い、若い女性が「やってみたい」「面白そうだな」と思う業界になってきているということです。今までにはなかったことです。けれども、実際にそういう若い女性たちがこの業界に入職して働き、そして定着する。これが本当に難しい。国土交通省のアクションプランでも10万人の女性技術者・技能者を20万人にしようとしていますが、なかなか増加の兆しがありません。その原因に、今までの業界のさまざまな常識があります。それを私たち女性は知っています。ガンガン訴えていきたいと思いますので、皆さんも、ぜひご協力ください。
それでは「建設業界への入職を推進するには、こんなことをしたらいいのでは?」というちょっとした工夫を、パネラーの皆さんよりご教示いただきたいと思います。いかがでしょうか?
◆高校よりもっと早い段階で建設業に興味を持たせられる工夫も必要
飛田:
私には小学生と中学生の子どもがいます。学校の授業の一環として、職業体験をよくさせていただいています。実際にその職業体験の場で、話を聞いたり、体験をさせてもらうことで、子どもたちは、その仕事をすごく身近に感じるようです。家に戻ってからも、「この仕事はこんなふうなんだよ」と私に説明してくれます。高校生、大学生のインターンシップも有効ですが、小学生、中学生の子どもに対して、同様の体験をさせてあげることで、進路について考えるきっかけになるのではないかと思います。親御さんもそうですが、建設業という仕事は子どもにとってあまり身近ではありません。知識がないことで誤解した捉え方をしていることがあると思います。というのも、子どもが小さい頃、一緒によくアニメを見ていたのですが、たいてい出てくる建設業者は悪者なんですよね。重機で森に入って行って、自然を破壊するんです。成長するにしたがって、そればかりではないと子どもも分かってくるとは思うのですが…。
例えば、道路や河川を整備することで、災害を防いで安全な暮らしができる、便利になる。そういうことが分かれば、建設業を少しは身近に感じ、自分もやってみたいなという気持ちになって、見方も変わるのではないかなと思います。
籠田:
正しい建設業を、ぜひ皆さんにもっと知っていただきたいというのが、私たちの共通テーマです。アニメの話がありましたが、ニュースでも、「何か悪いこと=建設現場・作業」というイメージを私たちは持ってしまっています。それがいい・悪いというよりも、もっと実際に建設業のいいところを、業界内だけでなく、業界の外に対しても積極的に発信していかなければいけないと思います。一般の国民に対して建設業のイメージを正しく伝える、そういう広報がすごく大事だと感じています。若い山崎さんは、建設業のイメージと実際に入職されてみていかがですか?
山崎:
設備工事というのは、橋を造ったり、建物を造ったりすることに比べると、少しマイナーなイメージで、なかなか伝わりづらいところがあります。今、テレビでも省エネやエコをPRしています。設備はそこに直結する仕事だと思いますので、そこから興味を持っていただければいいなと考えています。
籠田:
建設業といっても、本当に幅広く、いろいろな職種があります。設備の話をしてくださいましたが、設備という専門分野の中でどんどんキャリアを積み重ねていくことができるというお話でした。そういうことも知らない方が多いということで、設備女子会の皆さんが頑張っていらっしゃるのは素晴らしいことです。
田原さんには、できましたら離職した人がもう一度復帰するアイデアを教えていただけたらと思います。建設業は、周りの男性がすごく優しいので、子どもができると、「もうそんなに頑張らなくてもいいのでは」と言われ、離職するケースが多いんですよね。

建設産業女性活躍セミナー in 札幌

 

田原:
私もいったん離職した女性の経験者が、復帰しやすい施策があったらいいなと思います。実体験ではありませんが、例えば復職に向けた研修制度や、過去の実績を復職後の経験年数に加算するなど、ちょっとした優遇措置があるともっと戻ってきやすいと思います。また、戻ってきた後も、キャリア形成に非常に有利になるんじゃないかと思います。
籠田:
先ほどもありましたが、私は女性活躍を考えたときに、やはり女性のネットワークがとても大事だと思います。女の人はしゃべることで元気になるんですよね。入職もまだまだ難関ですが、もっと難関なのが定着です。ずっと続けていくことはとても素晴らしいことですし、「石の上にも3年」と私も言われました。「だったら5年頑張ってやろう」という根性で頑張って、10年、20年が過ぎ、どんどん面白くなっていく──建設業界はそういう業界だと思います。土山さん、定着に関してぜひお話しいただけますか。
◆女性活躍には、「期待し」「機会を与え」「厳しく育てる」の3Kが大切
土山:
就業規則を整えるなど、施策はいくつもあると思いますが、私はまずソフト面をなんとかしなければならないと思います。つまり、若いうちに自分の仕事が楽しいと思ったり、誇りを持てるようになることが第一歩と思います。これは男女共通のことになりますが、自分の仕事が好きだったり、仕事にやりがいを持っていたら、多少の困難があっても辞めません。逆に仕事が好きになれなかったり、仕事にやりがいを感じていなかったりすると、子育てや困難なことがあったときに「もういいかな…」と思ってしまいます。ですから、若いうちに誇りや楽しみをつくりあげることが大事です。建設業の醍醐味は、ものづくりに携われることです。早いうちに、現場の経験も含めて、仕事を与えることが大事だと思います。与えるのは男性上司ですので、男性上司の意識改革も必要です。
あと、もっとも私が大切と思うのは、性別による役割分担の意識改革です。誰もが潜在的に持っていると思いますが、「男は弱音を吐いちゃいけない」とか「女は繊細で気配りができる」といった、無意識のうちの偏見を解消していく必要があると思います。いろいろなことを性別ではなく個性としてとらえていく必要があるということです。特に建設業は男社会で、女性にはとても甘く、無理をさせられないという優しい男性が多くいます。けれど、そうではなく、女性を会社の大事な戦力としてとらえて期待していくことが大事です。まず、機会を与えないと経験になりませんし、実力はついていきません。先ほど建設業の3Kのお話がありましたが、私は、女性活躍の3Kは、「期待し」「機会を与え」「厳しく育てる」だと思っています。
籠田:
女性活躍の3K、期待し、機会を与え、厳しく育てる。なるほど。男も女も関係ないですね。人を活性化して、活躍させるためのすごいキーワードだなと思います。田原さん、定着についてお願いします。
田原:
少し角度をかえてお話しいたします。女性を活躍させよう、女性を定着させようということに、どうしても意識が行きがちですが、私が子育てしながら職を転々としたのは、ライフイベントに合わせて、どうしてもそこにはいられなかった理由もあります。あるときは、保育園からしょっちゅう呼び出しがあり仕事にならなくて、「もうあなたは要りません」と言われたこともありました。そこで、そういうことを抱えているのは、なぜ女性だけなのかを一度考えてほしいなと思います。つまり、「結婚・出産・介護で、仕事を続けるかどうかの選択を迫られるのはなぜ女性だけなのか」ということです。ここはやはり、社会全体に少し考え方を変えてもらわないと。女性は働いて、子どもを産んで、親の面倒も見ろと言われる─そんなこと、ひとりでできるわけがありません。
ですから、今、流行りの働き方改革ではないですが、男性の方々はもう少し働き方を考え直してほしいです。例えば、育児中の方は、女性に限らず、男性も早く家に帰れるようにしてほしい。これは直属の上司や経営者が本気で取り組まないといけないことだと思います。そうしていくことで、女性ももう少し働きやすくなるでしょう。子育て中のお母さんは経験しているので分かると思いますが、「お父さん、早く帰ってきて」ということです。全部ひとりで女性が背負うのは無理です。その辺の意識改革をまず進める。本人の努力だけではなく、周りの意識改革をすることです。
もう1つは、われわれ、コンサルタント業界もそうですが、業務を一人で抱えるくせがあります。チームで仕事をする意識を持って仕事をしなければいけません。「明日やろうと思っていた男性が、突然病気になって、口がきけない状態になったらどうするの」と、私はよく職場で言うのですが、女性に限らず誰かが急に休んでも、代わりがきくような仕事の仕方をすることです。
最後にもう1つ。子育て中は、家庭のことを大事にしたい男性も最近増えてきています。女性も男性も長い人生の中で、フルパワーで働けない期間がちょっとだけあります。そのときに、中小企業が全部自分たちでなんとかするのは大変なことです。お金もかかりますし、人の手配もかかります。ですので、何か補填できるような施策を国に考えてもらいたいです。補助など、そういうこともあったらいいのではないかと思います。
籠田:
たくましいアイデアがたくさん出てまいりました。本日会場は、実は50人定員のところ、60人近くの方がお越しくださいました。若い女性もいらっしゃいますし、意識改革で最初に旗を上げてもらいたい経営者の方も結構いらっしゃいます。感想やご意見をいただきたいと思います。
女性A:
本日は、本当にありがとうございました。私は来年入社予定の3名──男性1名、女性2名とまいりました。まさに建設業が抱える女性活躍のためには、新入社員のうちからそういう意識を持って仕事をしてほしいと思ったからです。本当は、女性2名と来るつもりでしたが、女性の内定者から、男性の意識改革がなければということで参加させていただきました。
手前どもが抱えている問題としては、若い女性技術者のロールモデルがいないという悩みがあります。私自身は、全て自分が最初でしたし、ロールモデルなんて考えることなく育ってきました。でも今日お話を伺って、ロールモデルが今、非常に若い人たちが悩むところなのだと分かりました。それについてどなたかにさらにアドバイスいただけたらと思います。
籠田:
あえて私がお答えさせていただいていいでしょうか。まず、「ロールモデル」という言葉は素敵な言葉ですよね。今、時代はダイバーシティマネジメント、多様性のある経営にあります。外国人、高齢者、障がい者など、さまざまな人たちを活かすことが求められています。ダイバーシティの多様性の1つが女性。女性が職場にいるということが、ダイバーシティの1つです。しかし、ダイバーシティ=女性というぐらい、女性は非常に多様性を持っています。誰か一人の女性が、誰か一人の女性のロールモデルになるのかといったら、そうでもありません。女性そのものが多様だからです。
あえていうならば、実は男性も多様です。仕事と家庭を別々にして生きていく時代は、もう終わってきています。わが社にはもちろん、子育てをしている女性がいます。彼女たちの次の目安・目標のひとつは、介護生活がうまくいくようにということです。そして、頑張っている男性社員もいます。総合職で働いている奥さんがいますので、どちらかというとわが社のほうが自由ということで、育児休暇をとったり、子どもの送り迎え、学童の迎えをしたりしています。
ただ、私も最初は女性社員に対して、「そんなわがままなことを言ってどうするの」と思っていました。けれど、「自由とわがままは違う」ということを自分自身が考えるようになりました。「自分を由する」と書いて「自由」です。自分は本当に建築が好きだから学んでいく、続けていくと覚悟を決めた人は、必ず働き方も人生も自分でデザインすると思います。
ロールモデルを持って帰っていただきながら、ぜひ自分自身が今後のロールモデルになるという覚悟を持って、未来をつくっていただきたいなと思います。
女性B:
このような機会をいただき、本当にありがとうございました。私自身、建築の会社に入社しましたが、建築を勉強したことは一切ありません。建築に魅力を感じて入ろうと決めました。私の気持ちとしては、これから女性が活躍できる業界に変えていかなければならないと思っています。ロールモデルの話ですが、今は私がその第一人者になってやるぐらいの気持ちでいます。
籠田:
とてもうれしいです。ありがとうございます。沖縄会場で、「建設業界は建築や土木学科を出た人じゃないと活躍できないんでしょうか?」という質問がありました。「建築・土木関連の学校を出ていないと、この業界では働けない」と思われる方、いらっしゃいますか?「いやいや、そんなの全然関係ないよ」という方のほうが、沖縄でもそうでしたが、結構いらっしゃいますね。学ぶこと、チャレンジすること、厳しさに直面すること、本当にたくさんありますが、ぜひチャレンジしてみてください。
では最後に一言ずつ、未来をつくっていく若い人たちにメッセージをお願いします。
◆建設業で働く女性、将来を担う女性へのメッセージ
田原:
女性も男性も頑張り過ぎないことが秘訣です。それと、周りに誰でもいいので、相談相手を見つけましょう。それから他の人と自分を比べないこと。そして細々とでいいので続けること。つまり、特に輝いたり、活躍したりしなくてもいいんです。自分の夢をかなえていくことが大事ですので、それに向かっていきましょう。同じ会社じゃなくても、仲間はいっぱいいます。みんなで一緒に歩きましょう。
土山:
実は、私は中学生の頃に土木屋になりたかったのですが、当時は女性でそんな高校や大学に進む人が周りにいなくて、「私が男だったら土木屋になったのに」とあきらめました。縁あって、建設業界に入ることができ、管理部長になったときに最初に始めたのが、現場を回ることです。現場に行くと、本当にわくわくしますし、生の声が聞けます。常日頃から私が思っているのは、建設業は、国民の安全と安心を守る、そういう誇りと大切な使命を担っているということです。現場で頑張っている人たちは、みんな自分の仕事に誇りと自信を持って働いています。
また、私の長く働いての実感は、自分自身を人間として成長させてくれたのは、仕事だということです。自分を磨いて、自己実現していくのは、座学ではなくて、やはり会社の中での人間関係や担当している仕事です。一人一人が無限の可能性を持っています。自分の人生を輝かせていくのは、やはり自分だということを申し上げておきたいと思います。
飛田:
建設業で女性が働くことに対して、心配になるという声をよく聞きますが、建設業は体力的な面が全てではありません。私は今、現場で働いていますが、現場ではそれぞれが自分の役割を果たしながら、みんなで協力し合ってお互いに補い合い、ものづくりをしています。完成した構造物を見ると、本当になんとも言えない気持ちになります。達成感のある素敵な仕事です。
まだ女性の数は少ないですが、国が建設業における女性の活躍を推進していることもあり、女性が利用する更衣室、トイレなどの設備面も、働き続けるための制度や整備も進んでいます。結婚・出産しても、なお活躍し続けることができる仕事だと思いますので、ぜひこれから建設業で働きたいという方には頑張ってもらいたいと思います。
山崎:
皆さんがおっしゃっているように、とても魅力的な仕事です。力仕事では男性にかなわないところもあるかもしれませんが、建設業界は力仕事だけではありません。女性は楽しいことを見つけるのがとても上手だと思いますので、皆さん一緒に楽しみながら、頑張っていきましょう。
籠田:
最後に、国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課主査である渡邊さんに総括をお願いしたいと思います。
渡邊:
皆さん、どうもありがとうございました。採用と定着の話がたくさんあり、いろいろとご参考になったと思います。経営層の方々もいらっしゃると思いますが、人口減少時代では、これまでの男性の入職にこだわった採用では苦労されると思います。しかし、今日のお話にあったように女性が十分戦力になることを認識し、ぜひ女性の採用にも取り組んでいただければと思います。また、定着の話では、建設業は長時間労働や週休2日となっていない状況等など労働環境が厳しく、建設業従事者の離職率等は高い状態です。一方、建設業以外の多くの産業でも人手不足になると言われており、労働環境改善のための動きが見られます。建設業界においても、今後は、労働環境を改善し働きやすい業界になっていくことが大切だと思います。これは建設企業各社の問題であり、特に中小企業では、不安はあると思いますが、建設企業各社がしっかりと取り組み、うまく情報発信を行っていくことで女性の採用・定着を進め、より業界を盛り上げていただければと思います。
また、イメージについて、3Kの話もでました。一般的には、まだまだ建設業は3Kのイメージが強く、親御さんのなかには、建設業に入職しようと思っているお子さんに反対する方がいまだに多いようです。このような状況を改善する一助になればと、国土交通省もメンバーに入っている「建設産業戦略的広報推進協議会」では、建設企業とともに学校を訪問し、建設業を紹介する「学校キャラバン」などを行っています。このような活動は各団体でも行っていると聞いておりますので、もし、参加の要請があれば、ぜひ積極的にご協力いただき、官民あげてイメージアップに取り組んでいただきたいと思っています。
建設業への女性の入職・定着を通じて、建設企業各社が労働環境改善、イメージアップへの取組を進め、男性も女性も活躍できる建設業になればいいなと思いました。本日はありがとうございました。

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